Be Happyプロジェクト
NPO法人わくわーくの小橋祐子です。福岡県北九州市で、主に精神や発達障がいをお持ちの方の生活や就労を支援する障がい福祉サービス事業所BOCCHIの運営と、「子どもからお年寄りまで、障がいがあってもなくても、外国の人であっても、誰もが気軽に集えることのできる」地域コミュニティづくりの活動に取り組んでいます。
障がいをお持ちの方たちにかかわることになったのは約30年前。小さい子どもがいたこともあり、短い時間で働く場所を探していた時にたまたま出会った職場が、無認可の小規模作業所でした。病気のこと、お薬のこと、家族のこと、社会の背景など、どれもこれも知らなかったことばかり。当時はまだまだ偏見も強く、当事者やご家族の困りごと、関連する世の中のことを一般の方が正しく知る機会が少なく、地域の中で分断されていたように感じます。彼らとの出会いとそこからの経験が今の活動につながっていると思っています。
任意団体であった作業所が年月を重ねながら法人化され、制度に基づいた障がい福祉サービス事業所となる中、一緒に働いていた仲間と新たな一歩を踏み出そうと考えるようになり、「互いを認め合い、こころ穏やかに安心して暮らせる社会」をめざしたNPO法人わくわーくを2010年5月に設立しました。設立当初の5名のスタッフのうち、家庭の事情でやむなく県外に帰省した1名の入れ替わりはあったものの、みんなで試行錯誤しながら日々の活動に奮闘しています。また、BOCCHIの利用者は、法人本体でとりくむ地域コミュニティ活動やさまざまな企画にかかわりながら、地域のさまざまな人や物事との交流を持ち、多くの経験をしています。
2018年4月、立ち上げ時の拠点から現在の場所への移転を期にさらに地域コミュニティ活動に力を入れ、子ども(地域)食堂をはじめ、音楽や国際文化を体験できる企画や、環境や人とのつながりを意識した企画も加えつつ、設立から10年を超えた活動からつながったさまざまな方たちの協力を得ながら事業を実施しています。
わくわーくは多世代、多様な方たちとともに、めざす社会を創り出していきたいと考えています。わくわーくとともに「互いを認め合い、こころ穏やかに安心して暮らせる社会」を創っていきませんか? みなさまのお力をぜひ貸してください。
1.何が問題か?
★困りごとを抱えた当事者:障がいを持ち、人とコミュニケーションをとることが苦手な方
★困りごとを象徴する数字: 北九州市で暮らす身体障がい者は46,193人、知的障がい者は11,768人、精神障がい者は10,501人(2022年3月末現在)
障がいのある人たちも地域の一員としてまちで暮らしています。病気や障がいのために対応しづらいこと(例:食事や睡眠、服薬等を適切にできない、公共料金の支払いや地域で暮らしていくための必要な手続きがうまくできない、仕事がうまくできない等)があるために、「困った人」などと間違った捉え方をされてしまうことも少なくありません。また、障がいを持つ本人自身もその困難さに気づけず、つらい思いをする方もいます。
病気や障がいの特性により、コミュニケーションが苦手な方などは、上記のような生活のしづらさがあっても、周りの人にうまく相談することができず、どうしてよいのかわからないままに生活習慣が整わない方もいます。そのような生活が続くことで、不安になり、孤独感が増し、さらに病状が悪化したり、不適切な言動をとってしまうこともあります。そのため、周りとのつながりが絶たれ、孤立してしまうこともあります。
2017年度に内閣府が実施した障がい者に関する世論調査では、「共生社会(障がいのある・なしにかかわらず、誰もが社会の一員としてお互いを尊重し、支え合って暮らすことを目指すという考え方)」を「知っている」と答えた方は46.6%、「言葉だけは聞いたことがある」は19.6%、「知らない」は33%となっています。また、「障がいのある人が困っている時に手助けをしたことがありますか」の問いでは、「ある」は61.8%、「ない」は38.2%。「ない」のうち12%の方が「どのように接してよいかわからなかったから」、79.5%が「困っている障がい者を見かける機会がなかったから」と回答し、「ない」が全体の90%以上となっています。このことからも、地域社会の中で障がいを持つ方と触れ合う機会は少なく、正しい理解が広がっていないと考えられます。
https://survey.gov-online.go.jp/h29/h29-shougai/index.html
また、障がい者の就労状況では、就労支援を行う障がい福祉サービス事業所のうち、雇用関係を結びながら働く「就労継続支援A型事業所」と雇用関係を結ばない「就労継続支援B型事業所」は全国で17,198事業所あります。特に、わくわーくが運営するBOCCHIのような就労継続支援B型事業所を利用する方たちの2020年度の平均工賃(賃金)は15,776円/月、時給にすると222円という結果が出ており、多くのみなさんが生活に困窮している状況です。
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000859590.pdf
厚生労働省が2018年度に実施した障がい者の雇用実態調査結果では、企業が障がい者を雇用しない理由として、「当該障がい者に適した業務がないから」がどの障がい種別でも80%程度を占め、他にも「障がい者雇用についてイメージがわかない」「職場になじむのが難しいと思われる」などの回答もなされています。
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000521376.pdf
障がいを持つ方と地域の人たちが交流する機会がないと互いを知り合うことができず、障がいについての正しい理解が進まず、どちらもが不安となり、負のサイクルを生み出すことになってしまいます。
このような負のサイクルを正のサイクルへと転換させるためには、出会いと気づきの機会をつくることが有効であると考えています。誰もが気軽に集える場があれば、そこに集い出会った多世代多様な方たちがかかわりながら、それぞれの知恵や力をともに持ち寄り、実践につながるコトが生まれるチャンスができます。ともに過ごす中で障がいを持つ方についての理解が深まり、互いを知ることで、困った時には相談でき、不安になることなく安心した生活を送ることができます。生活が安定し、周囲とのつながりができることで孤立することがなくなり、役割や収入も生まれてきます。
2.誰と解決するか?
★先行事例:
(1) NPO法人チュラキューブ(大阪府大阪市):「未来を伝える活動」「ともに創る活動」の取り組みで、かかわる人がともに社会課題を解決するための実践をしている
(2) 港南台タウンカフェ(神奈川県横浜市):つながりづくりから始まるまちづくりのカタチを実践している
障がいについての理解を深めるには、さまざまなつながりが必要です。障がいを持ち、人とコミュニケーションをとることが苦手な方も、行政サービスや医療機関、住まいや生活をサポートする支援機関である事業所などとのつながりは少なからずあります。家族や友人、ご近所さんなど、インフォーマルな方たちとのつながりは人それぞれかもしれません。しかし、その多くは「支援を受ける」ことが中心で、ともに何かを実践するということは少ないと考えます。互いを知り、気づくためには、そのようなつながりだけでは不十分です。ともに何かを実践する場やコトがたくさんつくられ、交流する中で互いを知り、気づきが得られ、障がいについての正しい理解が深まっていくと考えます。
3.どう解決するか?
★ビジョン(ありたい社会像): 互いが認め合い、こころ穏やかに安心して暮らせる社会
★ミッション(自団体の果たす役割):子どもから大人まで、ハンディのあるなしにかかわらず、誰もが気軽に集える場所や時間をつくり、ヒト・モノ・コトのつながりを広げる
わくわーくでは、大きく3つの柱を立てて事業に取り組んでいます。障がいをもつ当事者の就労支援や生活支援と、ご家族をはじめとする福祉に関する相談の場、そうした方たちへの支援を担う人材育成の事業を(1) 就労・生活支援【障がい福祉サービス事業所BOCCHI】で、多世代多様な方たちが集える「場」の提供を行う事業を(2) 地域コミュニティ【多世代交流スペースくるくる】で、そして、その両方をつなぐ「コト」をたくさん実践するのが(3)【Be Happyプロジェクト】です。
(1) 就労・生活支援【障がい福祉事業所BOCCHI】
障がい福祉サービス事業所BOCCHIでは、障がいを持つ方の就労訓練や生活訓練を実施しています。BOCCHI利用者はお菓子や小物づくり、カフェや店舗での準備や接客、企業からの封入作業などに取り組んでいます。地元の素材を使う、古紙を再生する、放置竹林を活用するなど、環境保護や循環社会にも目を向けた(3) で生まれるプロジェクト内の作業にも参加することで、地域の一員としての役割を担うことができます。仕事を通して一人ひとりがその人に合った力をつけていけるように経験を積んでいきます。
(2) 地域コミュニティ【多世代交流スペースくるくる】
わくわーくの拠点となる場所は「ココクル平野」と名付けています。ココクル平野の中には、(1)【障害福祉サービス事業所BOCCHI】のエリアと(2)【多世代交流スペースくるくる】のエリアがあります。くるくるのエリアにはカフェスペースの他、レンタルできるスペースやBOXがあり、講演会や演奏会、映写会など、多世代多様な方たちが集える「場」となっています。
(3) 地域協働【Be Happyプロジェクト】
障がいがあってもなくても、大人も子どもも、外国の人であっても、やってみたい「コト」、つくってみたい「モノ」がたくさんあると思います。ひとりでチャレンジもよし、ひとりではできない「コト」や「モノ」はそこで出会う人たちと一緒につくることができるかもしれません。(2)【多世代交流スペースくるくる】の「場」を中心に使いながら、そんな「コト」や「モノ」を創り出し、創り出されたさまざまな「コト」や「モノ」の一つひとつを集め、ともに動かすプロジェクトを【Be Happyプロジェクト】と名付けました。このプロジェクトは(1) と(2) をつなぎ合わせる役目ともなり、出会って気づき、わかって動くというサイクルができます。
4.“志金”のつかいみち
みなさまからいただくご支援は、(3) 地域協働【Be Happy プロジェクト】を充実させていくために活用させていただきます。3つのアクションのうち、(1) は国からの事業費で運営、(2) は工夫が必要ですが受益者負担で実施することが努力できます。しかし、双方をつなぐ大切なアクションである(3)【Be Happyプロジェクト】については、自費での運営が必要となります。民間助成金申請などでまかなえることもありますが、継続的ではありません。
この活動に賛同いただけるみなさまからの“志金”は、【Be Happyプロジェクト】の広報費や必要となる資材、また続々と生み出される「コト」や「モノ」を運営するために必要な経費に充てさせていただきたいと考えています。
2023年度の活動には420万円の運営費が必要となる見込みです。収入については、民間団体より2年目の継続助成をいただいて実施している本年度への繰越金、Be Happyプロジェクトを特集した初の年次報告書製作のための協賛金を計上していますが、全体を進めていくには、マンスリーサポータ―や賛同者からのご寄付がまだまだ必要です。
私たちは【Be Happyプロジェクト】が進み続けていくことで、障がい者への理解だけでなく、社会で課題とされているあらゆる事柄に関する解決の糸口が見つかる可能性があると考えています。みなさまにぜひ【Be Happyプロジェクト】の応援者になっていただき、その糸口を地域のさまざまな方と一緒に知り、理解し認めながら、みんながうれしくなる実践をどんどん生み出していきたいと考えています。みなさまのご支援、ご協力をお待ちしています。
5.伴走支援者の声
弊社では、伴走支援先との定例会議終了時に次回までの宿題を出させていただくことが多いのですが、わくわーくさんはその提出がとにかくギリギリ…(苦笑) 。開始前後にバタバタと宿題が送られてくるところから、わくわーくさんとの会議はたいてい始まります。
ただ、宿題を忘れたり、できなかったことは、一度もなかったように記憶しています。地域の人が気軽に立ち寄れる場所を常設で運営されていることもあり、思うように宿題に取り組めなかったこともあったと思います。それでも、言い訳することは一切なく、毎回の指摘事項を真摯に受け止め、受け入れようとアウトプットし続けるその姿勢に、ぼくはいつもプロ意識を感じてきました。
そもそも、コロナ禍で多世代交流スペース「くるくる」の利用が止まってしまっても、「ココクル平野」を維持し続けたのは、相当な覚悟が必要だったと思います。すべてはこの「Be Happyプロジェクト」のためだったことが、この間のプロセスを通してよくわかりました。
BOCCHIを利用する障がいを持った方たちと、くるくるを利用する地域のみなさんとで、これからどんなプロジェクトが生まれるか。継続して応援することで見守っていただけるとうれしいです!(木村)