組織課題解決ワークショップ@オンライン・第15回を開催しました
2023年06月05日
2021年から奇数月に開催する「組織課題解決ワークショップ@オンライン」の第15回には、地域金融関係者10名のみなさまにご参加いただきました。
参加者の主な属性は以下の通りでした。
・居住地:栃木県、群馬県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県
・所属:第二地方銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、その他等
ゲストには、一般社団法人あゆみ代表理事の野村順子さんと野村公禎さんをお迎えして開催しました。お二人とも地元の金融機関にお勤めだった経験があります。あゆみは、熊本県熊本市で重症心身障がい児者をお預かりする放課後等デイサービスや生活介護等を運営しています。
今回のワークショップのテーマは、「『医ケアがあっても、ずーっと安心、熊本の福祉向上計画(くまふく計画)』に地元の金融機関としてできることは?」でした。
3人1組のグループで宿題のプレゼンテーション動画に対する感想や質問を話した後、順子さんと公禎さんにみなさんから出た質問に丁寧に答えていただきました。以下のようなやりとりがありました。
●Q:順子さんがこの仕事を始めたきっかけは何ですか?
⇒元々転勤族で、知っている人がいない環境(東京、シンガポール等)で子育てし、社会から切り離されたような孤独感を多々感じた。頼らないといろいろな問題が出てきて、地域の子育てサークルに参加している中で運営者側になった。尼崎にいたときにNPOを立ち上げた。熊本に帰ってきて、大学の友人や金融機関時代の知人に会った時に、熊本の子育ての状況を聴いた。法人をつくって活動していった方が課題解決には早道だと感じて、家庭的保育室をまずは始めた。利用児のお兄さんが障がい児で、知的・発達の障がい児の支援も同時に始めた。重度障がいの子たちも最初は経験がなく不安だったが、勉強を始めて4年後ぐらいに立ち上げた。利用者が増え、施設も増えていった。
●Q:支援事業者・支援機関・地域・行政間の連携にあたってのボトルネックは何ですか?
⇒どこの事業者も「集まる時間が取れない」というのはよく聴く。職員研修に出す時間すらない。他の団体の方とお会いすることがあるが、情報交換をゆっくりする時間がない。相談を受ける事業所、行政、医療等も縦割りで役割が違う。関係構築に時間がかかるのもボトルネックだと思う。
●Q:あゆみのような取り組みを推進するために、銀行在籍中にやっておけばよかったと思うことはありますか?
⇒銀行員はソーシャルビジネスに対して不得手なところがある。タッチしたがらない風潮があった。一般社団法人のBSやPLも株式会社とは少し違うし、ソーシャルビジネスはうさんくさいと思う感じがあった。一般的に利潤追求型の企業と比べると収益が小さく、追いかけても意味がないと思ってしまっていた。でも、実際にあゆみがやっていることは医療法人と変わらないし、いい意味で相互扶助的なところがある。もう少し在籍中から団体にかかわっておけばよかったと思う。地域課題の解決はこの数年、どこの金融機関も掲げていて、向き合わざるをえないところが増えているのではないか。
その後、再び小グループで「あなたがあゆみの役員なら、何に取り組むか」を話し合っていただきました。それを踏まえた個人ワークでは、以下のようなアドバイスを書いていただきました。
●福祉医療機構と日本公庫と熊本の地域銀行の3者の協調での資金調達計画を公庫にお願いする。参加してくれた地域金融機関からボランティアを受け入れ、ボランティア体験を踏まえてあゆみのビジネスをよりよくするためのアイデアを出してもらうなど、ソーシャルビジネスへの知見を高めてもらう。
●地域の未来、医療ケア児とその家族の未来を担っていくという絵を具体的に描くこと。地域金融機関には地域のサステナブルにつながる点を見える化することが効果的と思います。経営デザインシートという未来を描くシートがあります。静岡市のイノチテラス、看取りの家ですが、看護師の女性の方がこのシートを描き、創業で無担保の協調融資を受けました。4行で億単位の設備資金です。
●地域金融機関の方へのアプローチとして、(1) 地域金融機関しかできないこと(地域のネットワーク)と(2)地域金融機関のメリット(行員の現場体験等を通じた課題起点の新規事業の体感など)の2軸はいかがでしょうか。
●銀行に再就職して今まで培った経験とノウハウで銀行を内部から動かしていただきたいです。
最後に、終了後のアンケートで参加者のみなさんから寄せられた感想の一部を紹介します。地域金融機関のソーシャルビジネス支援について考える時間になったという声も多くいただきました。
●重度障がい者及びそのご家庭に対する支援の現状や課題を知ることができ、大変勉強になりました。また、対話等を通じて、地域金融機関のソーシャルビジネス支援の現状や課題を本音ベースで聞けたこともよい経験でした。これまでは量的な理由(融資規模、過去の実績)で難しかったとのことですが、これからは質的な理由(行員の人材教育、課題起点の新規事業立ち上げの体感)により、地域金融機関・ソーシャルビジネス事業者間の連携が深まるのではないかと希望を抱きました。
●普段あまり接点がなく知らない分野のお話だったので、知るきっかけとなり、勉強になりました。今日お話がなかった部分も含めて課題はたくさんあるかと思いますが、少しでも多くの方々が関心を持ち、知恵を出し合えるようなつながりが必要ですね。また、金融機関にとってはソーシャルビジネスの分野はまだまだ本格的に関わるには難しいということも改めて感じました。