不登校の子どもたちの「これから」を応援するプロジェクト
NPO法人Since(シンス)の門脇です。私自身、さまざまな要因から学校に苦手意識を持ち、毎日苦しいことが多い学生時代でした。学校が唯一の生きる道と思い込み、どれだけ苦しくても学校に行かなくてはならないと、日々逃げ場のない生活を送っていました。
そのような経験もあり、学校外でも安心して過ごし学べる場所をつくり、状況に応じて学校以外の選択肢を取ることができる社会をつくっていきたいと思うようになりました。現在は大学時代の仲間とともに立ち上げたSinceで、フリースクールをはじめとして不登校の子どもたちの居場所や学びの場を運営しています。
この問題の解決に挑む私たちの志は、以下の記事をご一読ください。
凸と凹「登録先の志」No.34:門脇真斗さん(NPO法人Since 理事)
1.何が問題か?
★困りごとを抱えた当事者:不登校になって社会的に孤立している、社会的自立に困難を抱えている子どもたち
★困りごとを象徴する数字:
・令和5年度の全国小中学校の不登校児童生徒数:過去最多の約34万6千人(文部科学省の児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果)。27人に1人が不登校で、不登校児童生徒数は前年度より約4万7千人増加
・令和5年度の滋賀県小中学校の不登校児童生徒数:3991人(滋賀県教育委員会の児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果)。不登校児童生徒数は前年度より606人増加。小中ともに過去最多
現状の不登校の子どもたちを取り巻く社会では、子どもたちの「社会的孤立」と「社会的自立の難しさ」が問題として挙げられます。
まずは、「社会的孤立」について。不登校になることで、子どもたちは「学校」という一つの大きな居場所を失い、孤立してしまいます。そして、孤立により、「自分なんて」と心が蝕まれていきます。誰もがこの社会に居ていい。子どもたちには、早急に安心できる「居場所」が必要です。
次に、「社会的自立の難しさ」について。不登校になることで、「学習」と「体験」の機会が必然的に減少します。現在は不登校であっても、子どもたちは将来の社会を担っていく一員です。社会を担っていく、つまり「自立」していくためには、教科学習を含めた「学習」と社会と接点を持ちながら学ぶ「体験」の機会が必要不可欠です。不登校の子どもたちには、そうした学校外でも当たり前に学び・体験できる機会や場が保証されるべきです。
2.誰と解決するか?
★先行事例:NPO法人ここが運営するフリースクールここ(学習の機会を確保することはもちろんのこと、キャンプや遠足などの課外活動に加え、料理等の体験の機会、シンポジウムで子どもたちが社会とつながる機会も十分に確保している。企業とのつながりも豊富であり、子どもたちへの恩恵も深い。さまざまな学習・体験機会を経て、一人ひとりに適した進路実現につなげている。)
子どもたちを取り巻く環境には、公立小中学校などの「教育機関」や、子ども食堂をはじめとする「地域」など、さまざまな機関が存在しており、さまざまな連携や多角的な視点のもと、子どもたちへのかかわりがなされています。
ただ、不登校の子どもたちに対して不足しているのが、「継続的に」誰かとつながれる居場所や、「継続的に」社会と接点を持ちながら学べる場所です。子どもたちに「継続的に」誰かとつながれる居場所や学べる場を提供していくことが当法人の使命だと思い、週5回のフリースクールと週1回の無料の居場所を運営しています。
3.どう解決するか?
★ビジョン(ありたい社会の状態): 不登校の子どもが健やかに育つことができる社会
★ミッション(自団体が果たす役割): 不登校の子どもに「居場所」と「機会」を提供する
不登校児童生徒が社会の中で健やかに育つことができるようにするためには、「不登校児童生徒」「不登校児童生徒の親」「社会」の3つの視点で行動していく必要があります。
(1) 子どもたちへ「居場所」と「機会」の提供
週5回のフリースクールや週1回の無料の居場所、訪問支援等、さまざまなアプローチを通して、子どもたちに安心できる「居場所」や社会とつながりながら学べる体験の「機会」を提供していきます。
(2) 親の会や親向けワークショップ等の実施
親自身も子どもを見守っていく存在として、自身を肯定し豊かに生きていけることが重要です。そのため、親の会をはじめとして、親の考えや思いを共有できる場や親同士のつながりができる場を提供していきます。
(3) 「居場所」と「機会」拡充に係る調査及び施策考案
子どもたちへの「居場所」と「機会」の提供を広げていくためには、各市町での支援拡充を図っていく必要があります。そのために、学校外の居場所の認知度調査及び認知拡大施策をはじめとして、行政機関との子ども支援に関する連携等も実施していきます。
4.“志金”のつかいみち
上記の「どう解決するか?」を実現するために、2025年度はみなさまからご支援いただいた“志金”を活用し、以下の活動に取り組みます。
(1) 「誰もが参加できる無料の居場所」の提供
現在も実施している誰もが参加できる無料の居場所「ナイトステイ」を継続して週1回実施していきます。参加費をいただかない形で運営しているため、活動に必要な食料品や備品等を補っていく必要があります。
(2) 子どもが創る地域マルシェの実施
不登校の子どもたちが自立していくために必要なさまざまな「体験」の一つとして、料理やものづくりなど、子どもたちの好きを出発点として地域の方々とかかわれるマルシェを実施します。
(3) 「居場所」と「機会」拡充に係る調査
社会的に不登校や学校外の学び場への理解を深めていく一つとして、学校外の場の「認知度」に関する調査と認知拡大を図るための施策を考案していきます。
不登校の子どもたちへの「居場所」と「学び場」の継続した提供、これは社会全体として考えるべき緊急かつ重要な問題です。冒頭にも記載しましたが、現在は不登校であっても、子どもたちは将来の社会を担っていく一員です。不登校の子どもたちのこれからを、当法人や各家庭だけでなく「社会全体で支えていく」という視点が何より重要です。みなさまの子どもたちへの温かい気持ちや姿勢こそが、これからの子どもたちが生きていく社会を形づくっていきます。
不登校の子どもたちのこれからを支える活動に、ぜひ一緒に取り組み、温かい社会を創っていきましょう。
5. 伴走支援者の声
WILL2024でSinceさんと半年間ご一緒する中で衝撃を受けたのは、不登校児童生徒の受け皿としてフリースクールのような場があっても、その場所にもなかなか来ることができない子どもたちの存在でした。
フリースクールだけ運営していても、その子たちにはたどり着くことができないため、Sinceでは誰もが参加できる居場所=ナイトステイを運営し、訪問によるアプローチも行っています。2022年度から開始したナイトステイは助成金を活用して2年間、月2回のペースで開催してきました。一方、月2回の実施では、安定した居場所としての機能を果たせておらず、参加費を払える子どもたちだけの参加に留まってしまうという課題がありました。
そこで、2024年度はクラウドファンディングに挑戦し、259名の方から300万円以上の“志金”を集め、週1回・無料の居場所として運営しています。しかし、クラファンで集めたお金は24年度の活動資金であり、25年度以降も継続していくためには、継続的な支援が必要となります。
Sinceという団体名には、『はじまりの場所』として、子どもたちの「これから」を応援したいという思いが込められています。現場を訪問させていただいた際、子どもたちがこの場所を自分の居場所と感じて、安心して過ごせていることが伝わってきました。ぜひ一緒に、子どもたちの「これから」を創っていきませんか。(長谷川)