いぶきファミリー(社会福祉法人いぶき福祉会会員)


【ガバメントクラウドファンディング】働くということ|第一回オンライン説明会を行いました

2026年10月22日
いぶき福祉会の北川です。
10月21日(水)の夜7時。
今年いぶきが取り組む「ガバクラ」についての説明会をオンラインで開催しました。

今年のガバクラ(ガバメントクラウドファンディング:ふるさと納税の仕組みを使って、社会の課題に取り組む活動を応援していただく取り組みです)のテーマは、「働くということ ─重症心身障害児者の営みを社会の価値に」です。その説明会、第1回の様子を、皆さんにお届けします。

窓口が止まった夜に

始まってすぐ、私はひとつ、残念なお知らせをしなければなりませんでした。

「ふるさと納税の受付窓口になっている『ふるさとチョイス』が、個人情報の漏洩により止まっています。プロジェクトのページも開けません。いつ戻るかも分かりません。
それでも、このプロジェクトをやめるつもりはありません。今回の取り組みは、お金を集めることよりも、仲間たちの姿を、いろいろな人に伝えていくことに軸足があります。お金がなかったらないように、あったらあったように進めていきたいと思います」
そうお伝えするところから、会はスタートしました。

(このことは、別の記事でもお知らせしています)

◆ 寄付の窓口が止まっても、物語は止めない ─ガバメントクラウドファンディング「働くということ」

続いて、いぶきの森洋三さんから、プロジェクトの中身を説明しました。いぶきでは重症心身障害のある人たちも、役割をもって仕事をしています。紙漉き(和紙をすく仕事)をしたり、オリジナルコーヒーをプロデュースしたり!その実践が何を生み出しているのかを、みんなで確かめ、外の施設の取り組みとも分かち合い、レポートにまとめ、カフェのような学習会で共有していきたい。そんな計画です。

◆ プロジェクトの全体は、こちらの記事にまとめています。
【ガバメントクラウドファンディング】働くということ~重症心身障害児者の営みを社会の価値にする挑戦~

「重心(じゅうしん)」と呼ばれる仲間たち

そのあと短い動画をみていただいて、いぶきの藤井美和さんの話がつづきました。

藤井さんは、いぶきに来て18年ほど。その前は、県外にある重症心身障害の人たちの入所施設で働いていました。藤井さんはまず、「重心」という言葉の説明から始めてくれました。

「重心というのは、重度の知的障害と、重度の身体の障害をあわせ持った人たちのことです。基本的に、おしゃべりができる方はいらっしゃいません。自分でご飯を食べたり、自分でトイレに行ったりすることもできない人たちです」

いぶきには、お菓子をつくったり、おしゃべりをしたりする仲間もいます。その中で重心と呼ばれる仲間たちは、自分のことを自分の言葉で伝えることができません。

「全国的に見ても、重心の人たちに仕事をしてもらおうという場は少ないと思います。たいていは、音楽療法や、感覚を楽しむ遊びのような、リラックスできる活動が中心です。私たちもそういう時間を大事にしています。でも、何かをしようとすると、職員が手を持って、物を持たせて……。そうすると、『やらせている』『やらされている』という形になってしまう。そこに疑問や抵抗感があって、なかなか仕事にまでは行き着かないんだと思います」

仕事が、禁止になった

藤井さんは、前の施設でのことも話してくれました。

「実は前のところでも、通所の部門で仕事をしていたことがあったんです。ポプリをつくっていました。わずかな売上をみんなの人数で割って、月に何百円というお給料を持って帰る。そこからさらに少しずつ1年間みんなで貯めて、年度末にご飯を食べる。そういう中で見てきた仲間たちの姿や、家族の喜び、それから家族に向ける仲間たちの自慢げな表情がありました」

けれど、その施設では、最終的に仕事はとある事情で禁止ということになってしまったそうです。

藤井さんは、その葛藤を抱えたまま、いぶきに来ました。来た当初は、いぶきの重心の仲間たちの部屋(「こらぼ」と呼んでいます)でも、仕事はほとんどしていなかったといいます。

「でも、みんなに仕事はあっていいんじゃないか。やれるんじゃないか。きっとできるし、変わるに違いない。そう思って、チームで話したり、やってみたりしながら進めてきました」

「この指一本なら」
仕事を始めたころは、職員が一緒に持って手を動かすところからでした。そこから、仲間一人ひとりの動きをじっくり見ていったそうです。

「この人だったら、この指一本なら動くんじゃないか。こういうキラキラしたものになら、手を伸ばすんじゃないか。力はないけれど、一瞬だったら触れるんじゃないか。そんなふうに、仲間たちの動きやできそうなことに合わせて道具をつくっていって、少しずつ、それぞれが役割を持つようになって、今の仕事ができています」

藤井さんがいちばん大事にしてきたのは、「自分でできた」という感覚でした。

「できた、が、そのうち、やりたい、になっていくだろう。そういう未来を描きながらやってきました。そして実際に、仲間たちがそういうふうに変わっていくのを見てきました」

「しゃべりだしたら止まらないくらい歴史があるので、伝えきれないんですけど」と藤井さんは笑っていましたが、画面のこちら側にも、16年あまりの積み重ねの重さが、静かに伝わってきました。

「今日は仕事だから、行かないと」
仕事が変えたのは、仲間たちだけではありませんでした。

「最初は、お風呂に入れてくれればいい、安全でいてくれればいい、楽しいことをさせてあげてほしい、仕事なんてしなくていい、という親さんも多かったんです。それが、『お給料もっと上がらないの』とか、『今日は仕事だから行かないといけないよ』という言葉が、親さんから出てくるようになりました。きっと、仕事に行く子どもの姿を見て、変わってこられたんだと思います」

仕事は、外とのつながりも生みました。つくったノートを納品しに行く。それが、街に出るきっかけになります。

「この人たちは、外に出て人と出会うことが、たぶんあまりないと思うんです。分かっている私でさえ、街なかを歩いていて偶然出会ったことは、ほとんどありません。でも仕事があることで、外ともつながれるし、仲間同士もつながるし、職員との信頼関係も深まる。私たち職員の成長にもつながっていると思います」

そして藤井さんは、こう続けました。

「これを、うちだけでやっているのはもったいないと思うんです。私の色眼鏡で、いい見方をしているだけじゃないか、というところも含めて、ちゃんと検証して、大事だと思うよ、と言えるようにして伝えたい」

自分たちの実践を、自分たちで疑うところから始めたい。その言葉に、私は藤井さんの誠実さを感じました。

画面越しに伝わってきたもの

動画を見ていたとき、画面の中の大堀愛子さんの表情が、私はずっと気になっていました。大堀さんは、第二いぶきで重心の仲間たちと一緒に過ごしています。いぶきに入って14年目です。

自己紹介のとき、大堀さんはこう話していました。

「仲間たちから教わることが多くて。特に重症の仲間と出会って、私自身がすごく大きく変わったと感じています。それは、仲間の力によるものなんです」

動画のあと、その気持ちをもう少し聞かせてもらいました。

「自分と仲間のかかわりで感激することもいっぱいあるんですけど、ほかの職員と仲間がやりとりしている姿に感激することが、本当にたくさんあるんです。その場面を、そのまま外に伝えたいと思うことがいっぱいあって。すごくうれしくなって、その場で泣けてしまうくらい、心にずどんと響くものがあるんです。写真では伝わりきらない空気感とか、温度感とか。どういう方法がいいのか分からないんですけど、私たちだけで持っておくのはもったいないなって」

看護師の浅野由起さんは、総合病院の急性期の病棟で長く働いてきました。重い障害のある人たちと一緒に過ごすのは、いぶきに来てからが初めてだったそうです。

「動画を見ながら、私はいつもどんな気持ちでみんなと仕事をしているのかなって、振り返っていました。藤井さんの言っていた『できた』という気持ち。仲間ができたことにすごくうれしそうにする場面で、私も一緒にうれしいと思える。一緒にできたことを喜び合う、あの瞬間が本当に幸せだなって、いつも思うんです」

「仕事というと、すごく堅苦しい気もするんですけど、そうじゃなくて。仕事を通して、仲間も私たち職員も、お互いに素敵な感情をもらっていると思うんです。それを外に出せたら、私はうれしいなと思います」

山本昇平さんは、「働くことで、人って幸せになれると思っています。それは誰でも一緒だと思う。だからこそ、働くということに価値がある」と話しました。池田光巳さんは、「第二いぶきに来てから、重心の方とかかわって、たくさんのことを学べてよかった」と、自分の歩みを重ねていました。

どれもいぶきの職員たちの素直なことばでした。

外から届いた言葉

一般から参加してくださった3人の言葉も、私たちにとって大きな励みになりました。

精神障害のある人の支援に50年近くかかわってきた森さんは、かつて県の機関で8年間、療育手帳の判定に携わり、たくさんの知的障害のある人やその家族と出会ってきたそうです。
「一般の方たちは、働くってどういう意味があるのか、あまり考えたことがないんですね。当たり前のように働いているので。でも、長く入院している人や、重心の人たちにとって、働くことは、一般の方が持っている意味よりもずっと重い意味があると思うんです。その重い意味を本人に実現してもらったり、家族に理解してもらったり、社会に伝えていくのは、身近にいる職員や看護師さんたちだと思います。ただ、ばーっとは広がらない。いぶきさんのような活動を、本当にこつこつと広めていく必要があるんだと思います」

県外で長く暮らし、岐阜に戻ってきた西田さんは、共同作業所が生まれたころのことを思い出しながら話してくれました。学校を卒業しても行く場所がなく、家にいるしかなかった障害のある人がたくさんいた時代のことです。
「僕らの仕事は、待つことが仕事なんです。特に重症の方なんかはそうだと思うんですけど、その待つことの大切さを、今の時代に伝えられたらと思っています。支援員や世話人の仕事は、外からは見えない。どんな仕事をしているのかを、外に向けて発信できないかなと」

大学教員の兼松さんは、学生時代に実習で出会った、ある場面を語ってくれました。「寝たきりの方がベッドごと作業場に入っていて、ほんの小さな動きで、1日に数個の部品をつくっていた。そこでは『彼がいることに意味がある』と言われていて、みんなが彼にあいさつをするところから始まっていたんです」
「今日、初めて紙漉きの場面を見せていただいて、自分の中に沸き上がってくるものがありました。働くということに、仲間の方にも、職員の方にも、ストーリーがあるんですね。仲間の方が、かすかな手を動かすか動かさないか。さあどうだ、よし行くぞ、という息づかいを、職員さんも感じていて、わーっと声が上がる。そういうところを、言葉に整理して表すことができたらいいなと思いました」

そのまま、見てもらう

会の終わりに、森洋三さんからひとつの提案がありました。オンラインの見学会です。実際の紙漉きの様子を見てもらう。録画をして、後から解説をつけながらみんなで見て、感想を寄せてもらう。そんな形もいいかもしれない、と。

大堀さんからはこんな感想が。
「見学会の日に、みんなが絶不調で、職員がめちゃくちゃ頑張っている、という場面も出てくると思うんです。でも、気持ちが向かない仲間に職員がどうかかわっているかも含めて、本当にそのまま見てもらえるといいと思います」

いぶきも大きくなり、同じ法人で働いていても、職員がほかのチームの風景を見る機会がなかなか持てなくなってきています。「身内」とか「外の人」とかを超えて、みんなが学びあう機会になればいい。私はそう思いながら聞いていました。

言葉を探す時間

この会は、何かを決める場ではありませんでした。どんな言葉で、誰に伝えていけばいいのか。それを探す時間だったと思います。

働くことの中には、「行ってきます」「行ってらっしゃい」があります。「ただいま」「お帰り」があります。「頑張ってきたよ」「お疲れさん」があります。毎日なにげなく交わしているこうした言葉を、交わす機会が少ない人たちがいます。重い障害のある仲間たちも、そうかもしれません。

「この子らを世の光に」。障害福祉の父といわれる糸賀一雄さんの言葉です。これほど古びない言葉はないと、私は思っています。その言葉を、いま、私たちなりに確かめ直してみたい。それが、今回のプロジェクトにこめた私の思いです。

正直に言えば、私たちはこれまで、重症心身の仲間たちの「働く」を言葉にする機会をあまり持ってきませんでした。肌感覚でやってきたことを、ちゃんと言葉にしていく。今回の会は、その最初の一歩になったと思います。

次回のご案内

説明会は、あと2回ひらく予定です。

・第2回 2026年10月26日(月)19時~20時
・第3回 2026年11月4日(水)19時~20時

いずれもオンライン(Zoom)です。リンクのFacebookより告知をさしあげます。

集まる人が変われば、生まれる話も変わります。どなたでも大歓迎です。ぜひお気軽にご参加いただけたらうれしく思います。

そして当日参加してくださった皆さん、本当にありがとうございました。
これからも、仲間たちのねがいを真ん中に、皆さんと一緒に、この「働くということ」の物語を紡いでいきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。



社会福祉法人いぶき福祉会 北川雄史

支援者 55人

本プロジェクトは、ログインしてお気に入り追加や支援をすると、「活動報告」更新時に通知メールが届きます。
また、支援者による支援の申し込みが完了した時点で、凸と凹登録先が支援金の提供を受ける契約が成立するものとします。
なお、本プロジェクトは月額課金型になります。


500 円 /月

配送方法:郵送

●いぶきの想いや活動を綴った会報と報告書、いぶきの仲間たちからささやかなプレゼントをお届けします。
(1) 会報誌(4月・10月)
(2) いぶき福祉会年次報告書 (7月)
(3) いぶきオリジナル商品(年1回)

1,000 円 /月

配送方法:郵送

●いぶきの想いや活動を綴った会報と報告書、いぶきの仲間たちからささやかなプレゼントをお届けします。
(1) 会報誌(4月・10月)
(2) いぶき福祉会年次報告書 (7月)
(3) いぶきオリジナル商品(年1回)

3,000 円 /月

配送方法:郵送

●いぶきの想いや活動を綴った会報と報告書、いぶきの仲間たちからささやかなプレゼントをお届けします。
(1) 会報誌(4月・10月)
(2) いぶき福祉会年次報告書 (7月)
(3) いぶきオリジナル商品(年1回)

5,000 円 /月

配送方法:郵送

●いぶきの想いや活動を綴った会報と報告書、いぶきの仲間たちからささやかなプレゼントをお届けします。
(1) 会報誌(4月・10月)
(2) いぶき福祉会年次報告書 (7月)
(3) いぶきオリジナル商品(年1回)

10,000 円 /月

配送方法:郵送

●いぶきの想いや活動を綴った会報と報告書、いぶきの仲間たちからささやかなプレゼントをお届けします。
(1) 会報誌(4月・10月)
(2) いぶき福祉会年次報告書 (7月)
(3) いぶきオリジナル商品(年1回)

250 円 /月

配送方法:郵送

●いぶきの想いや活動を綴った会報と報告書をお届けします。
(1) 会報誌(4月・10月)
(2) いぶき福祉会年次報告書(7月)