「ソーシャルバンク・コミュニティ」発足プロジェクト


【レポート】JPBVソーシャルビジネス支援分科会:ドイツのソーシャルバンク「GLS銀行」の事例を学びました

2023年12月14日
ソーシャルバンク・コミュニティ(SBC)呼びかけ人の木村真樹(合同会社めぐる)です。

12月4日(月) 13:00-15:00にJPBVソーシャルビジネス支援分科会との共催で、本プロジェクトのドイツの訪問調査先のひとつである「GLS銀行」というソーシャルバンクの取り組みを、オンラインで学ぶ機会をつくりました。
https://sbshien231204.peatix.com/

当日のレポートを、SBC発足を応援する「発起人」「応援団」にご登録いただき、分科会のメンバーでもある半田徹郎さん(第二地方銀行員)に作成いただきました。半田さん、ありがとうございました!

なお、「ソーシャルバンク」に関しては、同じく「発起人」「応援団」にご登録いただいた江口晋太朗さん(編集者/プロデューサー/TOKYOBeta 代表)が、一昨日のニュースレターで配信してくれています。ご参照いただけますと幸いです。
★JPBVソーシャルビジネス支援分科会・第9回★

当日の参加者はゲストの明治学院大学の林さんと以下の11名でした。
・木村真樹さん@めぐる(分科会リーダー)
・芦沢郁哉さん
・芦田一毅さん
・江上広行さん@URUU
・新谷正志さん@船井総合研究所
・仲谷俊之さん@京都信用金庫
・ノムラマサヒコさん
・長谷川友紀さん@めぐる
・半田徹郎@第二地方銀行
・本村直之さん@地域創発コラボレーション
・山口郁子さん@全国労働金庫協会

●日時:2023年12月4日(月) 13:00-15:00
●講師:林公則さん(明治学院大学 国際学部 准教授)
●テーマ:公益のための金融機関とは~GLS グループを参考に~

1.講演内容

(1) この研究に至った背景
・もともと経済の専門であり環境経済論等の研究を進めていた。研究者になる時に取組んだテーマが、「軍事活動と環境」であった。これが根底にあり、いろいろ派生してGLS銀行(社会的金融)や有機農業への支援の研究に広がっていった。
・税金から行われている活動として国防(軍事活動)があるが、環境観点から見たら軍事は生命を破壊するための手段なので、そもそもない方が絶対によい。しかし、なかなか軍事費が減らせないでいる。
・自分が払った税金は強制的に徴収されるにもかかわらず、何に使われるのかつながりが見えづらく使用される現状がある。
・税金でもできることとできないことがあり、自分のお金を自分が望む方法に使用されているかという観点から、GLS銀行に興味を持ち始めた。
・例えば、当時普通の銀行は融資していない分野であった、再生エネルギーや有機農業へGLS銀行は融資を行い、社会の方向性に影響を与えた。
・さまざまな研究を行い、銀行に従事している人に伝えたいことを中心に話をする。
・『新・贈与論』を書いて2点思うことがある。1点目(一般向け)は「お金について今までと違った考えをしてもらえたらよい」、2点目(金融機関向け)は「GLS銀行の運営詳細を知ってもらいたい」と思っている。

(2) GLS銀行について
・GLSグループは、銀行部門・信託財団・出資部門から成り立っている。1961年にGLS財団が設立された。

(3) お金の2つの側面
・お金の使われ方によっては、よい影響を受ける時もあれば、悪い影響を受ける時がある。
・ウラ面の話としては、自制心・他人への意識が奪い取られることがある(無意識化)。人や自然や社会との関係を切り、個別化させる(所有、囲い込み、分離、希少性、欠乏)。お金は蓄積に向かい、匿名性の高いものになる。
・その一方、表面の話としては、創造的なプロセスである(交換、融資、贈与)。お金は社会的な関係性の表現につながる。贈与において、新しいもの、未来的なものが実現される。お金は、人間の成長や個性の能力発揮を支援でき、社会を変えるために使えるものである。
・お金の表とウラがあり、資本主義が進み、ウラの面が拡大していった。銀行も同様に収益目線が強くなっていった。しかし、銀行は表面の公益を念頭に置いた活動ができるはず。
・お金を稼ぐことが目的ではない。お金での繋がりを模索しながら頑張っている。

(4) 銀行の役割
・資本主義が発展するにつれて資本が拡大し、大企業への融資が拡大していった。軍事に集中させるために間接金融を進め、軍事面でのお金が多く回り、軍事化していった。
・経済成長には大事な役割を果たすものの、一方でお金を増やすという利己的な理由で、利子のついた預金に預け入れをする者が増加した。
・預金者は利子や安全性に執着(利己的)。利益とは自分だけのものであり、共益とは特定グループの利益、公益とは社会全体の利益を指す。社会全体の利益である公益の考え方が大切である。

(5) 公益銀行の5つの要素
①透明性
・預金者は窓口に預けて、つながりを考えていないし、追えない。少し増えて戻ってくるという意識。ずっと銀行に置いてあると思い、どう使われているか考えさせない仕組み。
・自分のお金をこの人・この事業のために使われていることをわかるようにすること。融資先がわかるような形を進めた。
・最近では寄付だけでなく、出資や融資の分野でも個別の事業を指定できるクラウドファンディングを行っている。例えば、GLS銀行はバリアフリーを進める会社へのクラウドファンディングを行っているが、そうすることで自分のお金が個別に見える。
②関係性
・利子は人間と人間の距離、貸し手と借り手の距離を表現している。血縁や地縁でつながる密接な関係性では、利子をとらないのが一般的。利子はグループのしがらみから逃れるという意味で、自由の手段。銀行においては、貸し手と借り手の個人的な関係は解消されている。
・今まであった血縁のつながりが徐々になくなる中で、自らの意思で構築した人間関係の中で、相互の親密さを育む必要性がでてきている。このことを促すための銀行である。
・GLS銀行では、融資先同士の関係を構築している。お金を出し合い、事業が厳しくなった時のアドバイス基金をつくろうと働きかけた。調整・保障基金、年会費等で社会をよくする仕組みをつくっている。
③話を聴くこと
・資力が少なければ少ないほど、苦悩が多ければ多いほど、多くの支援が必要。もうかる事業だけに支援しても仕方がない。厳しくてもソーシャルでがんばろうとした人の応援。
・インターネット銀行は進まない。GLS銀行では、経費のかかる支店(現在7ヶ所)を減らすのではなく、より相談を受けやすい新たな支店コンセプトを模索中。コミュニケーションも重要で、7つの支店で年間300回以上のイベントを開催。
④水平・分散・協働型
・1990年代以降のIT革命で中央集権型(垂直統合型)にシステムの有利性が奪われた。
・そこまで稼がなくていいので、応援したい個人や組織を応援する。大きい銀行は役割や運営を大きく変えなければならない時期にきている。公益のための銀行が生まれる下地が広がっており、新しい価値観や共感が重要なポイントである。この変化に適合したクラウドファンディングが急速に広がりつつある。
⑤運営費と贈与
・GLS銀行では、お金のない人から相談料はもらえないために赤字となる。利子支払の放棄で補てんしていた。2017年1月からは預金者に年会費60ユーロ(約8,000円)を課した。収益事業より公益事業を大切にする。贈与的な役割であり、資金量は2010年の17億ユーロから、2015年の36億ユーロへ急増した。

(6) 公益のための金融機関(銀行)
・GLS銀行は人びとの社会への関心を高めるような銀行をつくろうとした。①お金の出し手と受け手の間の無関係性を意識的な関係に変化させること、②問題を見つけ、人々の意識をより広い範囲まで届くようにし、第三者や自然や社会のためにお金を回すことから生じる結果を人びとに認識させ、その認識から出発して行動させることをめざした。

2.質疑応答

Q)GLS銀行の始まりは?
A)ゼロからつくられた。1961年に信託財団設立。公益機関として富裕層向けに国へ寄付および税免除目的で当初運営していた。もっと多くの人にお金ののことを考えてもらいたいといった主旨で1974年にボウフムにてGLS銀行設立。協同組合の組織であり、場所の縛りがない。大きな信用金庫と同等の規模。本気で社会のためにとの基準をつくり、運営している。例えば、バイオディーゼル事業には融資しない。農地を菜種栽培のために利用している点がネック(食料等の社会的な使い方があるため)。基準・理念に反する事業には一切融資しない一貫性がある。完全ホワイトを継続している。ブラックは絶対に混ぜない。

Q)預金者が増加した理由は?
A)イベントの質等ではないが、原因が分からないのが現状。
 ⇒SBC発足プロジェクトの視察時の質問として、直接確認する。

Q)日本でGLS銀行のような銀行がなぜ育ちにくい?
A)国民性の違いがあるか。仮説であるが、GLS銀行は例えば遺伝子組換や有機農業等の啓発運動を行う。専属部署が行っているが、そうすることで一般の人びとの意識が変わってきている。日本国民とはレベルが違う。市民が支えないと存続できないので、現在の日本ではハードルが高い。
 ⇒銀行だけ責めても仕方がないか。日本の国民も銀行も多様性が少ない。メインストリームの銀行は変わりにくい。

3.所感

・日本とドイツの違いを感じた。日本ではまだまだ多様性が広がらず、格差社会であるからか利己的な風潮であり、寄付文化が広がらない。寄付は成功した人の中でほんの一握りの方が行うことのイメージがある。その背景には何があるのか知りたい。
・ぜひドイツの視察では、どのようにして預金者が増えていったのか詳細にヒアリングしてもらいたい。時代背景、自利利他の状況、国民性、社会保障の充実、経済の安定、価値観等の観点。
・次に、ドイツと比較し日本はどうなのかの分析を行う必要がある。
・GLS銀行のようなことは、地域のメインストリームではない、中小規模の金融機関から生まれてくるものかと思う。一方で、サステナブル経営のために運営上の経費は賄う必要がある。預金者が運営費を支払ってでも心の満足(ウェルビーイング)を得られることが拠出への理解につながるので、重要なポイントである。

以上

現在の支援金額 3,365,000 円

支援者 325人

残り時間 終了

本プロジェクトは、ログインしてお気に入り追加や支援をすると、「活動報告」更新時に通知メールが届きます。
また、支援者による支援の申し込みが完了した時点で、凸と凹登録先が支援金の提供を受ける契約が成立するものとします。


5,000 円

163 人

配送方法:メール

(1) 活動報告メール送信
(2) SBCサイト名前掲載(小/テキスト)
(3) SBC発起人証送付(PDFファイル)

10,000 円

142 人

配送方法:メール

(1) 活動報告メール送信
(2) SBCサイト名前掲載(小/テキスト)
(3) SBC発起人証送付(PDFファイル)
(4) ドイツ訪問調査発起人限定報告会当日資料&レポート送付

25,000 円

5 人

配送方法:メール

(1) 活動報告メール送信
(2) SBCサイト名前掲載(小/テキスト)
(3) SBC発起人証送付(PDFファイル)
(4) ドイツ訪問調査発起人限定報告会当日資料&レポート送付
(5) ドイツ訪問調査発起人限定報告会ご招待(24年5月開催予定/オンライン・アーカイブ配信あり)

50,000 円

10 人

配送方法:メール

(1) 活動報告メール送信
(2) SBCサイト名前掲載(小/テキスト)
(3) SBC発起人証送付(PDFファイル)
(4) ドイツ訪問調査発起人限定報告会当日資料&レポート送付
(5) ドイツ訪問調査発起人限定報告会ご招待(24年5月開催予定/オンライン・アーカイブ配信あり)
(6) 呼びかけ人・榊田隆之&高橋一朗発起人限定講演会ご招待(24年7月開催予定/オンライン・アーカイブ配信あり)

100,000 円

5 人

配送方法:メール

(1) 活動報告メール送信
(2) SBCサイト名前掲載(中/ロゴ可)
(3) SBC発起人証送付(PDFファイル)
(4) ドイツ訪問調査発起人限定報告会当日資料&レポート送付
(5) ドイツ訪問調査発起人限定報告会ご招待(24年5月開催予定/オンライン・アーカイブ配信あり)
(6) 呼びかけ人・榊田隆之&高橋一朗発起人限定講演会ご招待(24年7月開催予定/オンライン・アーカイブ配信あり)

200,000 円

0 人

配送方法:メール

(1) 活動報告メール送信
(2) SBCサイト名前掲載(大/ロゴ可)
(3) SBC発起人証送付(PDFファイル)
(4) ドイツ訪問調査発起人限定報告会当日資料&レポート送付
(5) ドイツ訪問調査発起人限定報告会ご招待(24年5月開催予定/オンライン・アーカイブ配信あり)
(6) 呼びかけ人・榊田隆之&高橋一朗発起人限定講演会ご招待(24年7月開催予定/オンライン・アーカイブ配信あり)