「ソーシャルバンク・コミュニティ」発足プロジェクト


【レポート】JPBVソーシャルビジネス支援分科会:ソーシャルバンクの基礎知識を学ぶ「勉強会」とWILL2024@オンラインの「説明会」を開催しました

2024年03月21日
開催日時:2024年3月15日(金) 10:00~12:00
作成者:玉島信用金庫 経営企画部 青江晋芳(あおえくによし)

第1部
ソーシャルバンクの基礎知識を学ぶ「勉強会」
講師:日本大学 商学部 長谷川勉教授
テーマ:協同組織ソーシャルバンクの位置と機能-エチカバンクを中心として


サマリー

●ソーシャルファイナンスが意識するのは社会的課題(経済的・社会的問題)

環境問題:地球温暖化・大気汚染・水質汚濁・動物保護・核エネルギー等
労働問題:労働条件全般
人権問題:女性・マイノリティー・人種差別
その他、衰退した地域経済、疎外された中小企業問題、消費者金融における多重債務者問題、発展途上国の累積債務問題、軍需産業問題…等

●こうした社会的課題解決の実施主体は、社会運動家や団体、政府であったが、持続・拡大しない→非営利金融組織への動因

例)CO2排出制限や賃金について法律で無理やり解決することはできるが、市場のメカニズムが狂う弊害あり。EUには外部環境を毀損するビジネスを規制することがEU指令(EU条約で規定された法的行為)で禁止される等、日本と比較すると法制メカニズムの有効性は高い。

●非営利型金融組織は、協同組織金融機関とそれ以外の非営利型金融機関に大別される。それぞれの特徴を表すキーワードは以下の通り。

(1) 協同組織金融機関
・自律、市民※1、相互、信頼※2
・問題解決志向
(2) 他の非営利型金融機関(株式会社など)
・他律、従民、一方的、無信
・問題解決志向
※(1) と大きく違うのは、“サービスを提供する側”と“受ける側”という構図

市民※1…日本には市民という概念はない。日本において使用する“市民”とイギリスやフランス等でいう“市民”=civilとは全く別。これらの国々は、市民階級が封建的な身分制度や土地制度を打開する市民革命を経て、権利を勝ち取った末に理想とする社会の実現を図ったのに対し、日本は戦後にアメリカによって型を作られた。そうした経緯があるため、国民のスピリットも大きく異なる。
信頼※2…社会的課題の解決には、相互信頼の有無・強さ(ソーシャルキャピタル)が重要。
・イタリア南部は低信頼社会
・イタリア北部は高信頼社会(日本も高信頼社会)
高信頼社会では、相互に信頼する度合いが高く、汚職や犯罪が少ない。治安が維持されている。

●ソーシャルバンクやソーシャルビジネスをサポートする上で一番重要なのは、「実施主体の熱意(経営者や取組みの中心となる者の熱い思い)」。
→熱意ある者は、不調になっても、それに耐え続ける力を発揮する(ネガティブケイパビリティ)。

Q.どうやってその熱意を感知するのか?
A.ベンチャーキャピタルや金融機関の職員が、ソーシャルビジネスに係る研究や伴走支援をする経験を通じて、支援先の熱意を感知するだけの感性や目利き力を高めることができる。

※ソーシャルファイナンスの本質
・個人の多様な価値観に基づく金融的選択の可能性を提示
・財政赤字の肥大化(政府の機能低下)に対する不信感
・従来の経済体制に対する失望感
・容易性と匿名性を有している
・経済的価値と社会的価値の同時平行的追求(SDGs、ESG)
・利潤追求型企業や団体への拮抗力
・法ではなく運動

●先駆的なソーシャルバンクの例「ETICA Bank(エチカ銀行)」

・エチカ銀行の本拠地はイタリアのパドヴァ市。「ETICA」とは「倫理」を意味し、イタリアにおいても希有な倫理志向のファイナンスを行う金融機関。
・出資者はあらゆる社会階層から構成されており、社会的課題解決について階層を越えた関心の高さがうかがえる。資金量(2022末)は27億6千ユーロで、国内全域に事業展開し、スペインへも拡大している。
・エチカ銀行のミッションは「協力」であり、エコ、文化、芸術等へのファイナンスを通じて、社会全体の改善を図る。具体的な組織目標は以下のようなもの。
(1) 倫理に基づく貯蓄管理に関する人々の気づきの向上
(2) 組合員(出資者)と銀行間のつながりを強める
(3) 意思決定プロセスに組合員の積極参加を実現する
(4) 全国ネットワークを構築する
(5) 銀行の活動が人々の理解を得ていることを定期的に検証する
・やっていることは普通の銀行と同様の預金・投資サービスであり、表面的には同じであるが、融資対象先とその手法が異なる。
・預金者と借入者の集会、預金と貸出金の使途が合致するような仕組みがあるため、相互のリレーションシップが強い。

【融資対象先】
(1) 社会的な共同事業(衛生・福祉・生活向上に資する活動、教育に関する活動、社会的排除や不利益を被っている人々を支える活動等)
(2) 国際的な共同事業(貧困問題、南北格差、災害援助、移民問題、公正な貿易といった課題解決のための国際協力活動等)
(3) 環境関連事業(再生可能エネルギーの普及、環境汚染の削減、環境配慮型の輸送、廃棄物の削減、生物多様性にも貢献可能なバイオ農業等の取組みに関する事業等)
(4) 文化及び市民社会に貢献する事業(社会が下降線に入った際に影響を受けやすい芸術家や文化遺産の保護、社会的弱者のスポーツ参加、観光事業の振興、貧困地域における雇用の創出等)
・上記のような取組みを行うのは、協同組合、NPO、アソシエーションが多く、こうした先が主な融資先となっている。
・個人の融資先については、障がい者や住宅資金の使途に限られ、耐久消費財・消費財向けローンは行っていない。
・融資先と金額を公開している(情報誌やHPで確認可能)。

【貸出基準】
・社会性や環境性などを評価・審査し、スコアリングモデルを利用した経済審査を行う(社会的インパクト※3を査定する)。定性評価は社会的要因を含み、財務上に現われない情報をスタッフが調査し点数化する。
社会的インパクト※3…CO2の排出量削減、障がい者の雇用実績等、貸出による社会への波及効果。

【資金調達(預金者)】
・ターゲット顧客は人間開発とエコに関してよくわかり、高い教育を受けた人々と団体。
・口座開設時に上述の貸出分野のいずれに融資したいかを選択可能で、自分が関心のある価値の実現を図ることができる。
・預金金利も0%からヨーロッパが定めた上限金利迄の間で選択可能だが、多くの預金者は満額を要求しない(ゼロもしくは減額された利息を選択する)。

●エチカ銀行のビジネスモデル(特徴)

・ボランティアスタッフを経営に組み込んでおり、その分コストインパクトが少ない構造を作り出している。地域情報の収集に長けており、最高のスタッフであるといえる。
・メンバーのリレーションシップの方法は、支店において通常行うが、情報提供についてはネットを通じて行われている。地域ネットワークが接触ポイントとなる場合も多い。
・ネットワークづくりに優れている。ある一定の地域でメンバーの会議が開かれる。地域の会が開かれる。
・貸出の透明性が際立っている。
・“ボランティア組織ではない”という強い考えとともに、事業継続体として効率性にこだわっている。
・イタリアの庶民銀行としては珍しく全国展開している。協同組織金融機関としての地区制限はなし。
・新規事業(特にバイオ農家の支援)の研究中、常にイノベーティブであろうとしている。
・融資実行による社会的インパクトを数値化して評価・審査している。
・ビジョン通りの融資基準により、排除と選好対象領域を明確化している。
・社会的評価者がボランティアとして活動している。

●エチカ銀行の事例からわかること

ソーシャルバンクがミッションを実現し、事業を継続するためには、「顧客を組織化する(つながりを作る)」ことがポイントである。
第2部
JPBVソーシャルビジネス支援プログラム「WILL」2024@オンラインについて


●WILLとは

日本における「価値を大切にする金融」の普及と実践を目的として2018年12月に設立された「JPBV」に会員として参加する金融機関役職員がトレーニーとなり、仕事で培ったスキルや経験等を生かして、ソーシャルビジネスを半年間応援するプログラム(以下、本プログラム)。トレーニーは、NPO等の支援先が次に取り組む事業を(高難度の価値の交換である)継続的な寄付で育む戦略を構築するために、本プログラムの協力先※1と「ファンドレイザー」と数名のチームを作り、定例会議等を通して「社会を変える」計画※2を策定し、“志金”調達計画を提案する。

協力先※1…認定NPO法人日本ファンドレイジング協会は、2016年度から「ファンドレイジング・スクール」を開催している。このスクールではソーシャルビジネスと社会の役に立ちたい人を繋ぐ「ファンドレイザー」を育成している。本プログラムのファンドレイザーを募集する際は、スクール卒業生等に参加を呼び掛けている。

「社会を変える」計画※2…WILLの運営事務局を務める合同会社めぐるでは、地域の社会課題解決に挑むNPOやソーシャルビジネスの事業を「社会を変える」手段と捉え、「社会を変える」計画と“志金”調達計画を策定し、継続支援者を募る「マンスリーサポートプログラム」を、WEBサービス「凸と凹(でことぼこ)」で提供している。

●WILLの特徴

(1) 支援先となるソーシャルビジネス事業者を公募で選定
伴走支援先を公募し、ソーシャルビジネス分野における参加金融機関等の認知度を高めることで、地域の社会課題解決に向けた本気度を組織内外で共有する。
・本年度までの応募団体は、17団体(2021)、10団体(2022)、2団体(2023)。

(2) 組織外メンバーとのチームによる半年間の伴走支援
これまでの仕事や暮らしの中では出会えなかったチームメンバ―との対話を通して、参加金融機関等役職員(トレーニー)の地域や社会に対する理解度を深め、リーダーシップ等を育む。
・本年度までのトレーニーは、6名(2021)、4名(2022)、2名(2023)。
・金融機関職員にもたらす変化→事業性評価に基づく融資を推進できるようになる/知識やノウハウを得て、本業支援に取組めるようになる/周囲の人を巻き込むことができるようになる

●WILL実施スケジュール

(1) 支援先募集・選考(2か月間)
・支援先募集
・事務局による書類選考

(2) 支援先決定→支援準備(1か月間)
・トレーニー&ファンドレイザー&事務局による最終選考
・オリエンテーション

(3) 伴走支援(6か月間)
・キックオフ会
・定例会議(「社会を変える」計画づくり、“志金”調達計画づくり等について)
・成果報告会
・振り返り&懇談会

※5~6か月目に取り組む提案書の作成が最も重要で時間がかかる作業
●トレーニーの体験報告
株式会社栃木銀行法人営業部 地域創生室 調査役 松林和宏氏 (まっつん)

・長年、営業店で営業や融資の仕事をしてきたので、地域創生やファンドレイジング等については知識がなかった。

・本部(地域創生室)に異動したタイミングでWILLに参加する縁をいただいた。

・その頃から、栃木銀行が2020年頃からサステナブル活動に注力しており、組織内で委員会を組成し、地域課題(過疎、空き屋、農業、医療等)の解決への取り組みを精力的に行っている。

・WILLを通じて、支援先が行おうとしている事業を整理して実効性やインパクトを検証することでロジカルな思考を鍛え、ファンドレイジングを行う効果的な方法やポイント等を体系的に学ぶことができた。各種フレームワークを活かした思考方法は、ソーシャルビジネス云々に限らず、今後のあらゆる仕事に活かすことができる。

・ファンドレイジングのチームメンバーとともに活動することで、県内でソーシャルビジネスに取り組む人たちと出会い、よい関係を構築することができた。
報告作成者の感想

・社会的課題を解決するのは、一部の個人やNPOによる慈善活動ではなければ、国や治公体による政策でもない。真に社会的課題を解決し、社会を豊かにしていくのはビジネスの力であり、そのビジネスを持続可能なものとするためには、思いを伝えて仲間を増やし、組織化していくこと。そうしたパーパスを持ったソーシャルバンクの存在が重要であることを理解した。

・ソーシャルバンクが「志金」を仲介するためには、社会的課題解決に対する思いを持った顧客と取引すべきであり、預金や貸出についてパーパスに準じた明確な基準を設け、それに準じたサービスの提供を徹底して行わなければならない。

・全国には、ソーシャル○○やESG○○、SDGs○○といったネーミングの預金商品や融資商品が増えているが、「意識高い系の商品ラインアップ増強」、「社会的課題に関心があることのPR」をしている程度で、実際に課題解決のインパクトはわからない。専ら株式会社(銀行等)が提供するこうした商品を利用する顧客がどういった思いを持っているのかも不明。

・一方で、信用金庫は銀行とは創業の理念や性質を異にする協同組織金融機関であっても、やはり市場(顧客)から見ると、銀行との違いはあまり浸透していないように感じる。

・行き過ぎた資本主義の結果、山積している社会的課題を解決していくためには、エチカ銀行やトリオドス銀行、GLS銀行等のような振り切ったソーシャルバンキングを行う金融機関を日本国内で増やしていく必要があると強く感じた。

・全国の協同組織金融機関が、各地域において、会員や地域の人々との繋がりをさらに深めることによって社会関係資本(ソーシャルキャピタル)を豊かにし、それを活かしたビジネスモデルを組成して実行することが肝要である。

・協同組織金融機関が「ソーシャルビジネスの支援」を行うのに親和性が高い組織であることも再確認できた。

以上

現在の支援金額 3,365,000 円

支援者 325人

残り時間 終了

本プロジェクトは、ログインしてお気に入り追加や支援をすると、「活動報告」更新時に通知メールが届きます。
また、支援者による支援の申し込みが完了した時点で、凸と凹登録先が支援金の提供を受ける契約が成立するものとします。


5,000 円

163 人

配送方法:メール

(1) 活動報告メール送信
(2) SBCサイト名前掲載(小/テキスト)
(3) SBC発起人証送付(PDFファイル)

10,000 円

142 人

配送方法:メール

(1) 活動報告メール送信
(2) SBCサイト名前掲載(小/テキスト)
(3) SBC発起人証送付(PDFファイル)
(4) ドイツ訪問調査発起人限定報告会当日資料&レポート送付

25,000 円

5 人

配送方法:メール

(1) 活動報告メール送信
(2) SBCサイト名前掲載(小/テキスト)
(3) SBC発起人証送付(PDFファイル)
(4) ドイツ訪問調査発起人限定報告会当日資料&レポート送付
(5) ドイツ訪問調査発起人限定報告会ご招待(24年5月開催予定/オンライン・アーカイブ配信あり)

50,000 円

10 人

配送方法:メール

(1) 活動報告メール送信
(2) SBCサイト名前掲載(小/テキスト)
(3) SBC発起人証送付(PDFファイル)
(4) ドイツ訪問調査発起人限定報告会当日資料&レポート送付
(5) ドイツ訪問調査発起人限定報告会ご招待(24年5月開催予定/オンライン・アーカイブ配信あり)
(6) 呼びかけ人・榊田隆之&高橋一朗発起人限定講演会ご招待(24年7月開催予定/オンライン・アーカイブ配信あり)

100,000 円

5 人

配送方法:メール

(1) 活動報告メール送信
(2) SBCサイト名前掲載(中/ロゴ可)
(3) SBC発起人証送付(PDFファイル)
(4) ドイツ訪問調査発起人限定報告会当日資料&レポート送付
(5) ドイツ訪問調査発起人限定報告会ご招待(24年5月開催予定/オンライン・アーカイブ配信あり)
(6) 呼びかけ人・榊田隆之&高橋一朗発起人限定講演会ご招待(24年7月開催予定/オンライン・アーカイブ配信あり)

200,000 円

0 人

配送方法:メール

(1) 活動報告メール送信
(2) SBCサイト名前掲載(大/ロゴ可)
(3) SBC発起人証送付(PDFファイル)
(4) ドイツ訪問調査発起人限定報告会当日資料&レポート送付
(5) ドイツ訪問調査発起人限定報告会ご招待(24年5月開催予定/オンライン・アーカイブ配信あり)
(6) 呼びかけ人・榊田隆之&高橋一朗発起人限定講演会ご招待(24年7月開催予定/オンライン・アーカイブ配信あり)