「ソーシャルバンク・コミュニティ」発足プロジェクト


【レポート】スイス・ドイツ・オランダ訪問調査発起人限定報告会を開催しました

2024年07月21日
●スイス・ドイツ・オランダ訪問調査発起人限定報告会

・開催日時:2024年6月27日(木) 15:00~16:30
・作成者:西武信用金庫 地域協創部 加古和貴(かこかずき)

●訪問概要

・訪問日程:2024年4月22日(月) ~27日(土)
・訪問先:スイスのFreie Gemeinschaftsbank(フリーコミュニティ協同組合)、ドイツのGLS銀行、オランダのInstitute for Social Banking(ISB)、オランダのTriodos銀行(店舗訪問のみ)
●各訪問先の報告

1.スイス Freie Gemeinschaftsbank(フリーコミュニティ協同組合)
担当:玉島信用金庫 経営企画部 青江晋芳、西武信用金庫 地域協創部 加古和貴

(1) 組織概要

・スイスのバーゼルに本社のみを構えている金融機関(1962年設立)
・シュタイナーの人智学の文脈で設立されており、スイスで最古のバリュー志向銀行
・預金612億円、貸出金546億円、信託融資51億円(日本円換算:2023年12月31日)
・預貸率が88%と日本国内と比較しても非常に高い
・実体経済における融資を行うことに価値を置き、仮想経済に対する融資は行わない。利益を出すことは目的ではなく、手段である。
・無利子預金(預金利息なし)が60%いることも特徴
・口座管理手数料・利息を自由に決めることができる

(2) 他の金融機関との違い

・市場での運用で稼ぐわけではなく、地域の事業者への融資(プロジェクト)が中心になる。
・融資先はHPなどで公開されている。
・信託融資の取り扱いを行っており、預金者と融資先が相対して取引が行える。
・口座管理手数料・預金利息を自由に決められる。
・融資案件のプロジェクト紹介:「共同住宅」「エコロジカルな農業」「シュタイナー教育の教育施設」など
・ブラックボックスについて
金融機関の在り方①:預金者のお金が金融機関に集まり融資先へ資金提供される。なお、その間はブラックボックス化しており、透明性がない。
金融機関の在り方②:ブラックボックスが若干透明化することにより、預金者がどの融資先へお金を預けてほしいかなどの意思を伝えることができるようになる。
金融機関の在り方③:ブラックボックスが展開されているのがフリーコミュニティ協同組合の特徴。タウンミーティングなどを通じて預金者と融資先をマッチングさせる。

(3) 人材育成

・従業員の教育はISBのサマースクール。マネージャー部門への教育はGABVを活用している。
・職員一人一人が自立して、融資審査ができる体制がある。

(4) 融資審査

・融資審査に細かな基準がない
・1事業先へ2名のスタッフが訪問を行い、最大2回の面談で案件組成
・案件組成後、5名の審査員の前でプレゼンを行い、合議決定
・審査員は内部スタッフで「リスク管理部門」「クレジット管理部門」「マネージャー」「コンサルタント」で構成されている。

(5) 情報発信

・パンフレットやはがきなどが店頭や管内のいたるところに設置されている。媒体にはフリーコミュニティバンクの理念やどのような想いでソーシャルバンクを運営しているのかなどが記載されている。
・HP上には融資案件をカテゴリー別に掲載(教育・農業・医学など)

(6) その他

・日本の金融機関のように融資先への「本業支援」はあまりしない。

(7) 気づきや印象に残ったこと

・ソーシャルバンクは活発な背景としては過去の歴史が関係しており、立場の弱い方々を支える意識が根づいていたのかも。
・ソーシャルバンクは債権の回収可能性よりも融資案件が「環境面」や「社会面」に及ぼす影響を測定し融資可否の判断をしている。
・中長期的な視点に基づき、地域や社会、環境の持続可能性を考え行動しており、「価値を大事にする金融機関」であることを認識することができた。
・全国の金融機関がソーシャルビジネスを支援するためには「ソーシャルバンク・コミュニティ(SBC)」のような存在が欠かせない。
2.ドイツ GLS銀行
担当:コミュニティバンク・京信/(一社) ソーシャル企業認証機構 脇敬允、株式会社リトルパーク 代表 古里圭史

(1) 組織概要

・1974年に発足したドイツの倫理銀行
・キャッシュカードは木製でつくられており、プラスティック原料0となっている。金融機関としてメッセージ性をしっかりと出している。

(2) 事業概要

・すべての融資、銀行自身の投資、条件・手数料、取締役会の収入構造が公開されている。
・協同組織金融機関であるが、会員も年次総会に参加できる。
・融資、投資の除外基準が明確に示されていた。
・取引先のパーパスが当社との除外基準に合致しないかを判断している。

(3) 融資基準・審査

・除外基準について詳細を公開しており、当社の方針を明確にしている。
・世界各地に投資先があるが、投融資を行わない国の基準を制定しており、その中には「死刑の執行と拷問が行われない国」と明記されており、日本は対象外国となっていた。
・投資委員会があり、第三者委員会(外部メンバー)を経て方針を決定している。メンバーには環境NGO、非営利組織、福祉NPOなど。

(4) 情報発信

・当社の投融資先についてパンフレットなどで情報公開している。
・数字で見えないことなどは言葉でパンフレットなどに落とし込み、発信している。

(5) ステークホルダーとのコミュニケーション

・預金者が銀行を通じて社会参画している意識を高めているように感じた。
・日本と同じように貸出金利が下がって、預金金利も下がり、利ざやが下がっているが、金利を顧客に決めていただくことにより持続可能性を維持している。
・2017年より預金者に対して年会費(60ユーロ)を課すようになって50億円程度の利益になっており、事業の持続可能性を担保している。
・年会費を導入後も預金金額は増加しており、民意を持ってできている。
(6) その他(当日のインタビューまとめ):ボーフム地域の担当・ステファンにインタビュー

【持続可能性へのアプローチ】
・環境問題と社会問題の双方にアプローチ。環境に良くても、ジェンダー問題に無関心や社会的に問題がある場合は融資を行わない。

【融資基準】
・当社の指針にあったパーパスを持つ企業への融資を行う。将来像からのバックキャスティングを行い、未来の理想的な社会像から基準を設定。化石燃料や原子力への投資は支援しない。

【融資および投資のプロセス】
・融資プロセスでは顧客と面談後、不明確な点があれば外部の評議委員会(8人)にて各々の専門領域にて議論される。

【持続可能な投資基準】
・定量的な評価は(CO2計測など)を行い、ESG評価を実施
・顧客にアンケートを送り、建物の断熱性や年間の暖房利用料などを記入していただく

【金融機関の意識レベル】
・当社は環境に対しては先進的である。ほかの銀行や企業も対応が進んでいる

【クラウドファンディングとGLS信託】
・GLS信託では12百万円ユーロを文化事業に寄付。
・経済性のない組織にも融資を行い、返済財源としては毎年の寄付にて算出

【イベントの重要性】
・年間で300以上のイベントを開催

【広報活動】
・自分の仕事時間の20%をイベントに費やしている

【気づきや印象に残ったこと】
①パーパス経営の徹底
②投資基準の透明性
③外部委員会の活用
④具体的な持続可能プロジェクト
⑤社会貢献型融資
3.オランダ Institute for Social Banking(ISB)
担当:ソーシャルセクターパートナーすくらむ 代表 久保匠、合同会社めぐる 代表 木村真樹

(1) 組織概要

・ソーシャルバンカーを育成することでサステナブルな社会を実現するための人材育成、ネットワークづくりをしている。

・13か国16のソーシャルバンクにて構成

・現在の会員の内訳は「ソーシャルバンク」「投資ファンド」「財団」

・事業内容は「人材育成」「ネットワーキング」「リサーチ」

・財源の内訳は「会費:40%」「事業収入:40%」「寄付:40%」で、合計15万ユーロ(日本円では2,500~2,600万円)

・入会基準&手順(GABVほど厳格ではない)
①役員の目利きで入会審査を進める
②理事会で入会の可否を図る。
③総会にてすべての会員組織による投票を行い決定する

・年会費(貸借対照表の総額にて)
5,000万ユーロ以下:1,000ユーロ
5,000万~2億5,000万ユーロ:3,000ユーロ
2億5,000万ユーロ以上:5,000ユーロ

・ISBの使命
ソーシャルバンカーを育成することでサステナブルな社会の実現に寄与するために、トレーニングやネットワークの機会提供を行い、実務者の知識共有を促進する

・3つの価値観を大切にしている
①常に人を第一に
②最高の潜在能力に向けた継続的な改善
③つながりを可能にすること
     
(2) 事業概要

「Education」
・年1回Summer Schoolを開催
・毎年80名の参加者で5泊6日(途中抜け禁止)
・午前は過去から学び、午後は未来を考えるプログラム
・参加費はISBメンバーは無料、非会員からは徴求
・大切にしていること:PCやスマホを使わずに、自分や他人と向き合う。対話を大切にしている。オンラインではなく、リアルで開催することに意義がある。
・会員がホストとなり、ISBと共同でラボも開催している

「Network」
・ISBネットワークは社会的責任を持つ銀行および金融に関心を持つ実務家、学者、研究者、講師、アソシエイト、関心を持つ個人などで構成される国際的なコミュニティ
・ネットワーク会員や構成員とセミナーを開催したり、新しい教育コンテンツの開発を行っている
・約200人の講師やワークショップリーダーと協力し、幅広い教育テーマを提供

「Reserch」
・いわゆるシンクタンク機能のようなもの
・ソーシャルバンクに関する理論的基盤と実践的な研究の促進を促している

(3) その他

・GABVでは経営者やマネージャとのネットワーク。ISBはサマースクールを活用して実務担当者のネットワーク
・大学との連携はあまりできていない。インターンやボランティアの受け入れは行っている
  
(4) 気づきや学び、感想

【久保】

・広く多様な主体が「ソーシャルバンク」の担い手として育ち、活躍することが大切

・金融機関だけではなく、NGO、学生、株式会社など多様な人びとがソーシャルバンカーをめざし、学び、共有することが根づいている

・金融という手段を通じてどんな社会をつくっていきたいのかという哲学を共有している。
【木村】

・「組織的」「継続的」ソーシャルビジネス支援の定着には、ソーシャルバンクの育成と交流が不可欠。ISBではそのためにも現場の職員を繋げている。代表者が変わっても現場レベルではつなぎ続けるために行っている。

【SBC発足に向けて】

・新しい仕組みを作るために「ビジョン」「ミッション」の定義づけをしている。

・運営委員会をこれから設立予定

・会費は「オンライン研修への参加のみ」「オフライン&オンライン研修の企画・参加および融資審査サポート(金額は預金量による)」の2つを想定

・事務局は合同会社めぐる、株式会社リトルパークなどによる共同運営を想定

・SBC憲章を作成して各金融機関に訪問している

・SBCのアクション(事業内容)案
①参加地域金融機関職員の育成・交流
②融資先や預金者(組合員)との関係づくりサポート
③情報発信・調査研究
●報告作成者の感想

・今回訪問した地域においては、市民が環境や持続可能な社会に対する関心が非常に高く、問題意識を抱えていることがソーシャルバンクの成長しているきっかけであると感じた。

・日本の金融機関においては「本業支援(課題解決支援)」に力を入れているが、ソーシャルバンクは「資金繰り支援」が中心であり、本業支援を行う姿勢はなく、融資先からも求められることはないとのこと。求められたとしても、コンサルティング会社を紹介する程度であり、ソーシャルバンクがお客さまの事業に関与することはあまりない。

・ソーシャルバンクにおいては預金者や地域との対話を大切にしており、自分たちの融資先の情報開示をHPやニュースレターなどで定期的に発行して積極的に取り組んでいる。また、そのような情報開示のツールを預金者との対話にも活用しており、預金者との信頼づくりにも役立っている。預金者にとっても、自身のお金がどのような事業者に資金が融資されているのかがわかり、ソーシャルバンクに預ける意義を感じられる。

・今後国内においてソーシャル事業者を「組織的」「継続的」に支援するためには、金融機関にとってはSBCのような組織が必要であり、従業員同士が学びあえる環境がとても大切である。

現在の支援金額 3,365,000 円

支援者 325人

残り時間 終了

本プロジェクトは、ログインしてお気に入り追加や支援をすると、「活動報告」更新時に通知メールが届きます。
また、支援者による支援の申し込みが完了した時点で、凸と凹登録先が支援金の提供を受ける契約が成立するものとします。


5,000 円

163 人

配送方法:メール

(1) 活動報告メール送信
(2) SBCサイト名前掲載(小/テキスト)
(3) SBC発起人証送付(PDFファイル)

10,000 円

142 人

配送方法:メール

(1) 活動報告メール送信
(2) SBCサイト名前掲載(小/テキスト)
(3) SBC発起人証送付(PDFファイル)
(4) ドイツ訪問調査発起人限定報告会当日資料&レポート送付

25,000 円

5 人

配送方法:メール

(1) 活動報告メール送信
(2) SBCサイト名前掲載(小/テキスト)
(3) SBC発起人証送付(PDFファイル)
(4) ドイツ訪問調査発起人限定報告会当日資料&レポート送付
(5) ドイツ訪問調査発起人限定報告会ご招待(24年5月開催予定/オンライン・アーカイブ配信あり)

50,000 円

10 人

配送方法:メール

(1) 活動報告メール送信
(2) SBCサイト名前掲載(小/テキスト)
(3) SBC発起人証送付(PDFファイル)
(4) ドイツ訪問調査発起人限定報告会当日資料&レポート送付
(5) ドイツ訪問調査発起人限定報告会ご招待(24年5月開催予定/オンライン・アーカイブ配信あり)
(6) 呼びかけ人・榊田隆之&高橋一朗発起人限定講演会ご招待(24年7月開催予定/オンライン・アーカイブ配信あり)

100,000 円

5 人

配送方法:メール

(1) 活動報告メール送信
(2) SBCサイト名前掲載(中/ロゴ可)
(3) SBC発起人証送付(PDFファイル)
(4) ドイツ訪問調査発起人限定報告会当日資料&レポート送付
(5) ドイツ訪問調査発起人限定報告会ご招待(24年5月開催予定/オンライン・アーカイブ配信あり)
(6) 呼びかけ人・榊田隆之&高橋一朗発起人限定講演会ご招待(24年7月開催予定/オンライン・アーカイブ配信あり)

200,000 円

0 人

配送方法:メール

(1) 活動報告メール送信
(2) SBCサイト名前掲載(大/ロゴ可)
(3) SBC発起人証送付(PDFファイル)
(4) ドイツ訪問調査発起人限定報告会当日資料&レポート送付
(5) ドイツ訪問調査発起人限定報告会ご招待(24年5月開催予定/オンライン・アーカイブ配信あり)
(6) 呼びかけ人・榊田隆之&高橋一朗発起人限定講演会ご招待(24年7月開催予定/オンライン・アーカイブ配信あり)