【レポート】SBC呼びかけ人・榊田隆之&髙橋一朗発起人限定講演会を開催しました
2024年11月14日
●SBC呼びかけ人・榊田隆之&髙橋一朗発起人限定講演会
・開催日時:2024年10月17日(木) 10:00~11:30@オンライン
・本レポート作成者:SBC事務局(合同会社めぐる・長谷川)
●当日のプログラム
(1) 講演:コミュニティ・バンク京信 榊田隆之氏
(2) 講演:西武信用金庫 髙橋一朗氏
(3) 鼎談:地域金融機関における「組織的」「継続的」ソーシャルビジネス支援の定着に向けて
本講演会は、ソーシャルバンク・コミュニティ(SBC)発起人向けのリターンの一つとして開催しました。SBC発足プロジェクト呼びかけ人の榊田さん(京都信用金庫)と高橋さん(西武信用金庫)をお招きし、両信金が何を大切にしてどんな「ソーシャル」な取り組みを重ねてきたかを共有いただき、SBC への期待もお聴きしました。
お二人の講演&鼎談の中で、特に気になったポイントをご紹介します。
(1) コミュニティ・バンク京信 榊田隆之さん
◆2020年:事業者向けの取り組み「ソーシャル企業認証制度(S認証)」を創設
ソーシャル・グッドなコミュニティを形成するためには、事業者と消費者、両者の価値観の軸が変わらないと社会のソーシャル民度は上がらないと考え、事業者向けのS認証を開始。事業者のみなさんの事業が、地域や社会の役に立っていることを可視化することを目的としてスタートし、現在では6つの信用金庫が連携し、2024年9月現在で1,193社が登録しています。
◆2022年:消費者向けの取り組み「京信ソーシャル・グッド預金」を発売
「世の中を少しでもよくしたい」と願う預金者同士、預金者と企業のコミュニティ創出を目的とした定期預金商品を開始。S認証企業を紹介する動画の紹介やS認証企業をより知ってもらえるようなイベントを開催しています。2024年10月現在で14,528件、262億円以上の預金が集まっています。
◆「課題解決型店舗」の拡充:2022年1店舗 → 2024年21店舗 → 2025年47店舗
窓口営業を午前中のみに絞り、地域と連携して地域活性化に取り組む「課題解決型店舗」を2022年に初めて膳所支店で開始。まちづくり融資について、地域の有識者と一緒に協議する『まちづくり評価委員会』も。
(2)西武信用金庫 髙橋一朗さん
◆「協同組合」としての役割・行動:徹底したお客さま支援活動を実施
どんなに費用や手間がかかっても、お客様の売上の拡大、収益の改善、黒字化、計画の実現を目指した活動を実施。そうすることで不良債権が減少して、お客様の数が増加し、金融機関としての本来の収益の維持・拡大につながるビジネスモデルを展開。全国の約7割の中小企業が赤字経営の中、西武信用金庫の融資先2万社は約7割が黒字。
◆2023年:パーパス『人に、地域に、未来に、「やさしい」金融期間』を策定
「計画」を「ビジョン」に変更し、一切の数字を排除して「パーパス」を策定。先行きが不透明な時代だからこそ、進むべき道を明確化する方針に転換。数字では表現できないものを大切にし、「人」づくりに注力。
◆コミュニティビジネス/ソーシャルビジネス支援や街づくり支援活動を強化・明確化
信用金庫は地域を離れられないからこそ、「地域が豊かで暮らしやすく、働きやすい地域であること」が必要。20年以上前から続けてきたコミュニティビジネス/ソーシャルビジネス支援や街づくり支援活動を強化・明確化するために、「地域協創部」と「公益公協部」を新設。
(3)鼎談
Q:「組織的」「継続的」な取り組みにしていくために実践していることは?
榊田さん)SBCが金融にかかわる多くの人の中でのコミュニティとしてきちんと広がっていくといいなと思う。熱い金融マンが全国にたくさんいると思うので、もっとつながりあって、ソーシャルな仕事に携わっていると実感できるといい。熱い人同士が出会って、仕事を離れて仲間になっていくことが大事だと思う。
髙橋さん)トップが変わっても続けられる取り組みにするためには、現場の一人ひとりに染みつくことが大事だと思う。約15年前に預金者の利息の20%を天引きしてNPOに寄付する仕組みをつくったが、金庫の中で猛反対が起こった。預金者の得になるキャンペーンはやりやすいけれど、お客様の利息が減る取り組みなので、地域のNPOのことをきちんと理解していないとお客様に説明できない。上司には職員の教育費として捉えてほしいと伝えて、半年ぐらいかけて承認を得た。
ソーシャルなこと、コミュニティなことに理解のある「人」を育てることが大事で、自分の周りを大切にしたい人たちが集ってこられるような組織にしていくことが必要。これが実現していけば、地域に必要な信用金庫であり続けられるのではないかと考えている。
Q:日本各地の金融機関が ソーシャルビジネス支援に取り組むには?
髙橋さん)SBCのような活動に参加することが、職員の育成や職員の採用につながると思っている。「西武信金は儲かっているからいいよね、いろいろな活動ができるよね」と言われることがあるが、「地道な活動をしてきたから儲かるようになったんだよ」と伝えている。
榊田さん)金融って、もっとあたたかいもんだよと伝えていく。信用金庫だけでなく地銀にも期待したいと思っている。手間ひまをかける覚悟が持てるかどうかが大切。少しずつアメーバのように広げていけたらよい。まずは真似から始めてもらえればいいと思う。
Q:SBCへの期待は?
榊田さん)自分自身も、20数年前にヨーロッパの金融機関を視察した経験が大きいと思っている。今の30~40代ぐらいの方がもっともっと体験を通じて、経験してほしいなと思う。これからの時代は右肩下がりのタフな時代になっていくので、もっとタフになっていく必要がある。失敗も含めていろいろな体験ができることをSBCでやってほしい。
髙橋さん)榊田さんのお話にすごく共感。SBCにもう一つ役割があるとすれば、SBCの活動の先にある、NPOやソーシャルビジネスの支援が充実していくことが必要になるのではないか。
来年2025年は団塊の世代がすべて75歳に到達する年。その方々が持ち合わせる社会経験が地域でたくさん生きるのではないか。その受け皿が、ソーシャルやコミュニティの担い手になっていくと思う。ベンチャーやスタートアップとして若い人が立ち上がるソーシャルな取り組みも増えてきた。これからの時代は彼らが生きていく21世紀なので、彼らがつくりたい世の中をつくらせてあげられる金融のあり方を考えていけたらと思う。
●参加者の感想(一部抜粋)
・ソーシャルグッド、すなわちひとと地域と地球のウェルビーイングを実現しようと、さまざまな協創の取り組みをされている金融機関の方々のお話に感銘を受けました。
・「ソーシャル×地域金融」を勉強中の私にとって、非常に刺激的かつワクワクしたお話をいただき、誠にありがとうございました。日頃、地域金融機関のみなさまとお仕事やプライベートでご一緒するなかで、「自分が生まれ育った地域のため、自分の子どもたち世代のため、役に立ちたい!」という熱い気持ちを持った方、または就職時持っていた方にお会いすることが多々ありますが、同時に「その情熱をぶつける場面がなく困っている」「ノルマでヘトヘトの状態」とのお話を伺うことも残念ながらございます。そういった方々にとって、コミュニティ・バンク京信さんや西武信用金庫さんのお取り組み、そしてSBCの発足は、非常に勇気を与えるものではないか、と感じた次第です。
●レポート作成者の感想
・創立100周年を迎え、ブランドネーム「コミュニティ・バンク京信」を制定された京信さんですが、本当は信用金庫自体の名称変更も検討していたけれど、問い合わせたら二つ返事で「ダメ」と言われたとのこと。名称変更は無理だったけれど、このブランドネームで呼んでほしいというお言葉があり、京信さんの本気度が伝わってくるエピソードだなと感じました。
・西武信金さんのお話を聴いて、渋沢栄一さんの「論語と算盤」が頭に浮かびました。渋沢さんが語ったとされる「道義を伴った利益の追求」と同時に「公益を大事にすること」のどちらも西武信金は実践されていると感じました。
・お二人のお話を聴いて印象に残っているのは、共通した価値観の多さでした。その中でも『都市型の信用金庫』として髙橋さんが語られた「ソーシャルビジネスやコミュニティビジネスは都市で起きている問題だと思っている。都市は人が多いけれど、すき間だらけになっている。人間の密度が濃いことと、人間の協力関係とが裏腹になっているのではないか。それが東京と京都で共通している部分ではないか」というお話は、なるほどと思いました。
・実は同い年というお二人。地域は違っても同じようなことを経験してきたからこそ、同志として共感する点や共通する点が多いと榊田さんも語られていました。理事長同士だけではなく、同年代の職員同士が交流していくことの大切さを感じ、SBCがその役割を果たすことの重要さを改めて認識する機会となりました。
最後になりますが、ご参加いただいたみなさま、榊田さん、髙橋さん、本当にありがとうございました。