10代の居場所づくりプロジェクト
一般社団法人ヒトノネ代表の篠田です。ヒトノネは、「共に育ち合う社会」をモットーとして、岐阜県で小学生から高校生の子どもたちやその家庭が安心して過ごせる居場所を提供しています。具体的には、学童保育、放課後等デイサービス、学習支援、10代の居場所(ユースセンター)を運営しています。
ヒトノネではさまざまな子どもたちが過ごしていますが、特に不登校や引きこもりのリスクを抱え、外からは苦しさが見えづらい子どもたちに寄り添い、学びや挑戦の機会をつくることを重視しています。ヒトノネで、子どもたちが自分らしさを取り戻し、未来に向けて前に進める環境を整えます。また、保護者が安心できる環境や学びの機会も提供し、学校・家庭・地域・企業・行政・NPOとの連携を通じて、多層的な支援ネットワークを構築しています。
私たちの使命は、「共に育ち合う社会」を創り、子どもたちと地域が互いに支え合いながら育つ未来をつくることです。
この問題の解決に挑む私たちの志は、以下の記事をご一読ください。
凸と凹「登録先の志」No.40:清水奈緒子さん(一般社団法人ヒトノネ 理事)
1.何が問題か?
★困り事を抱えた当事者:10代の子ども、特にグレーゾーンや発達障害を抱えた子ども
現代の日本では、特に発達障害や学習障害、グレーゾーンなど、外からは苦しさが見えづらい子どもたちへの支援が不足しています。例えば、グレーゾーンは福祉制度の枠から外れており、福祉サービスを受けることができません。また、乳幼児から学童期の制度に比べ、10代の思春期世代が利用しやすい公共施設やサービスなども少ないのが現状です。
公的支援が十分でない10代の居場所は限られ、「友達ができない」「学力が伸びない」「自己選択の経験が少ない」といった不利が重なり、不登校や引きこもりに直結することもあります。居場所や経験の欠如は自己肯定感を奪い、「どうせ自分なんて」と将来への希望を失う悪循環を生みます。さらに周囲の理解不足により相談できず孤立し、社会から断絶してしまうケースもあります。
また、子どもの自殺の中でも特に10代が最も多く、子どもたちは孤立感を抱いています。社会が子どもをそんな状態に貶めていて、これは深刻な問題です。10代の居場所こそ、”子どもの声を聞く大切な装置”として機能すべきです。だからこそ、子どもたちが「ここにいてもいい」と心から感じられる居場所を提供し、学びや挑戦を通して成長を支え、地域社会の理解と協力を育むことが必要です。
2.誰と解決するか?
★先行事例:
(1) 認定NPO法人D×P(大阪)-夜のユースセンター
繁華街付近・週2回16–22時開所。医療・福祉等への橋渡しを含む伴走支援。大阪市と連携した調査で運営実態・ニーズが整理され、指標設計の参考になる。
(2) 認定NPO法人カタリバ(東京)-自治体受託型の居場所運営
足立区「アダチベース」、文京区「b-lab」等、自治体受託で常設拠点を運営。さらに「ユースセンター起業塾」で立上げ支援のノウハウを提供。
困り感を抱える10代、とくに発達障害や学習障害、グレーゾーンなど苦しさが見えづらい子どもたちを支えるには、支援者だけでは力が足りません。子どもたちは家庭・学校・地域・行政・企業という多層的な関係の中で生きており、不登校や引きこもりの状態にある子は、家庭だけでも学校だけでも本来の姿や必要な支援は見えにくいのです。
私たちは家庭と学校をつなぎ、子どもの声を拾い、状況を共有することで適切な支援を届けます。さらに、子どもたちはいずれ社会に出て、地域や企業の一員として生きていきます。特にグレーゾーンや軽度の発達障害を持つ子どもは、一般の社会で働くことがほとんどです。だからこそ、地域企業の理解を広げることで、安心して社会に参加できる土壌をつくることも不可欠です。
具体的には
・企業と連携した取り組み(職場見学・職業講和など、フードパーティや保護者会への参画依頼)
・学校や相談支援・医療機関との連携(子どもの関係機関会議など)
・地域のNPOなどの団体との連携(協働でのイベントで助け合える関係性づくり)
・行政との取り組み(10代の居場所運営に関する知見の共有)
3.どう解決するか?
私たちは、子どもたちが「ここにいてもいい」と心から思える居場所をつくります。学童保育では、自ら考え、試す探究的な学びを。放課後等デイサービスや学習支援では、発達特性のある子どもが未来を描き、自分の可能性に挑戦できるよう支えます。ユースセンターでは、さまざまな悩みを抱える思春期世代(10代)がやりたいことに挑戦できる、また不登校や引きこもりリスクを抱える10代が安心して過ごせる環境を提供。加えて、学校や企業、行政、NPOとの連携を通して、子どもを取り巻く社会全体の理解と支援の輪を広げます。私たちが目指すのは「共に育ち合う社会」です。子どもたちは未来を信じて自立し、社会は多様性を理解し助け合いながら生きられる。この小さな変化の積み重ねが、地域全体の未来を変える力になります。
ヒトノネは、さまざまな特技や背景を持つスタッフが運営しています。いろんな生き方のロールモデルとの出会いが子どもの成長を後押しするからです。また創業以来、多くの市民講師や企業の方に協力いただき、100名以上の講師を招いて講座を開催してきました。子どもたちが経験をストックし、興味関心をもった時に伴走して学びを深めることを大切にしています。
4.“志金”のつかいみち
ヒトノネのユースセンターは、10代であれば誰でも気軽に立ち寄れる、地域に開かれた居場所としてスタートしました。特にアートや音楽、プログラミングなどクリエイティブなことを自由に取り組めるアトリエと、ハンモックやキッチンなどがある自由に過ごせるリビングスペースをもつ居場所が特徴です。防音室も設置されているので、ギターやドラムなどの教室が開かれたり、月に1度は10代を中心としたフードパーティ(こども食堂)が企画されています。実際には、不登校や引きこもり、発達障害・グレーゾーンなど、見えにくい“しんどさ”を抱えた子どもたちが多く訪れています。
ここで過ごし、スタッフや仲間と関わったり、好きなことに没頭したりするうちに、表情が明るくなったり、学習し始めたり、学校に行くようになったりするなど、自分の進路やその後の未来について考え始めたりする子が少なくありません。自分を否定せずにいられる経験は、未来を信じる力につながっています。
これまで、このユースセンターはNPO法人カタリバの助成(年間500万円)と伴走に支えられて運営されてきましたが、2025年度で終了し、以降は自主運営が必要になります。“志金”は、この居場所を継続するための人件費や家賃、活動費など、子どもたちが安心して過ごせる環境づくりに大切に使わせていただきます。
社会の中には、見えにくい“しんどさ”を抱える子どもや保護者がたくさんいます。ヒトノネは、そんな親子が安心して過ごせる居場所でありたいと考えています。ここで過ごすことで、子どもたちは「自分らしさ」を取り戻し、前に進む力を育みます。不登校の子どもは安心して学びを再開し、引きこもりリスクがあった子も少しずつ未来に向け歩き出します。保護者にとっても、その変化は大きな希望です。
居場所を続け、広げるには地域の理解と協力が欠かせません。あなたも活動の仲間として共に歩みませんか。支え合う一歩が、未来の子どもたちと地域を変える力になります。共に「共に育ち合う社会」を創りましょう。
5.伴走支援者の声
近年、10代(小中高生)の自殺者数が増加傾向にあること、また日本の若年層の自殺死亡率が他の先進国と比べ高いことは、多くの方がニュースで耳にしていると思います。しかし、10代の若者と日常的に接点のない方にとっては、「家庭や学校が対応すべき課題」と捉えられがちではないでしょうか。
ヒトノネさんと
WILL2025で半年間伴走する中で、不登校や引きこもり、発達特性など、外からは分かりにくい“しんどさ”を抱えた10代は、本人の努力不足ではなく、単に「安心していられる場所」が不足しているがゆえに孤立してしまうことがあると実感しました。これは本人や家庭、学校の問題にとどまらず、社会全体で向き合うべき課題だと強く感じています。
ユースセンターでは、子どもたちが思い思いに過ごしながら、少しずつ表情を取り戻していきます。対話や学び、挑戦の積み重ねが、自分の人生を自ら選び取る力につながっていく。しかし、3年間の助成は2025年度で終了し、2026年度以降は自主運営で継続していかなければなりません。いまや10代にとって不可欠な居場所であるからこそ、この活動を途切れさせるわけにはいきません。
ヒトノネの
スタッフ紹介ページを見ると、「元レコード店勤務&革細工職人」「本音が気になりすぎて強めに聞きがち。鼻歌が大音量な三児の母」「福祉業界11年、愛とpassionで子ども達を見守る人」など、思わず会ってみたくなる大人たちが並んでいます。こうした多様で魅力的な大人との出会いが、子どもたちの未来を確かに育てています。ぜひ、ともにその成長を見守っていきませんか。(長谷川)