みんなで創るミライの学校プロジェクト
はじめまして。
認定NPO法人コクレオの森の藤田美保です。子ども一人ひとりの個性を尊重し、民主的に生きる市民を育むオルタナティブスクール「箕面こどもの森学園」の運営を主な事業としながら、子育て支援事業、対話の場づくりやSDGsプログラムの提供、持続可能なまちづくり事業などを行っています。
私がこの活動を始めるきっかけとなったのは、小学校3年生の時にいとこの部屋で偶然みつけた『窓ぎわのトットちゃん』でした。「トモエ学園みたいな学校に行きたい!」という思いが叶うことはありませんでしたが、大学卒業後、公立小学校の教師になった時、私の子ども時代とあまり変わっていない学校現場を目の当たりにし、「トモエ学園みたいな学校に通うことはできなかったけど、創ることはできるんじゃないか…」と考えるようになりました。
どうやって学校を創っていけばいいのか途方にくれていた時に出会ったのが、「大阪に新しい学校を創る会」。そこには、「受け身で無気力な学生が気になる」「子どもが不登校だった」「子どもの頃、学校になじめなかった」など、いろんな思いをもつ仲間が集まっていて、画一的な教育スタイルではなく、子どもの主体性を尊重し、対話を重視する学校創りの準備が行われていました。これが、コクレオの森をともに創る仲間たちとの出会いでした。
準備を積み重ね、2004年に子どもたちの自立的な学びを支援するオルタナティブスクールを設立しました。この学校の教育は、画一的な教育に疑問を持っている人たちに選択肢の一つとして考えてもらえるように、自分も人も大切にしながら、自律して学習し、対話によって問題解決ができる人を育むことをめざしています。15年に「持続可能な社会の担い手を育む教育(ESD)を行う学校」として、UNSCOから認定を受けました。
カリキュラムをつくり、教育実践を積み重ねる日々の中で、私たちの想いは、「子どもの主体性を育み対話が大切にされる学校」に留まらず、次第に「そうした学校が地域のハブとして存在する、人と人、人と自然が調和して暮らす信頼によって結ばれる社会(まち)を創りたい」というものに変化していきました。
コクレオとは「ともに創る」を表す造語です。人と人、人と自然が調和して暮らす信頼によって結ばれるミライを、ともに創っていきませんか? あなたのお力を、ぜひお貸しください。
この問題の解決に挑む私たちの志は、以下の記事をご一読ください。
凸と凹「登録先の志」No.12:藤田美保さん(認定NPO法人コクレオの森 理事)
1.何が問題か?
★困りごとを抱えた当事者:画一的な教育に違和感を抱いている子ども
★困りごとを象徴する数字:
・令和3年度の不登校は24万人を超えました。在籍児童生徒に占める不登校児童生徒の割合は2.6%(文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」令和4年10月27日)
・不登校児童生徒数の約3倍が学校に行きづらさを感じている(日本財団 「不登校傾向にある子どもの実態調査」2018年)
日本の学校の教育方法は、学力を平等に保障することが求められているため、教科書に書かれている画一的な教育内容を暗記中心で詰め込んでいくのが基本的なスタイルです。こうした教育を受け続けることで、子どもたちは受け身になり、学ぶ意欲が下がり、自分の考えがもてず、周りに合わせて行動するような人になってしまってがちです。実際、全国960万人の小中学生のうち、24万人が不登校になっており、その3倍が学校に行きづらさをかかえているというデータがあります。
一方、欧米などの先進国では学校教育の多様化が進み、子どもたちは自分のニーズや価値観に合う学校を選ぶことができます。そのため、「不登校」という言葉は存在しません。教育の内容も子ども一人ひとりの興味や関心を重視し、参加型で対話形式の学習が広く行われています。
私たちは、画一的な教育に違和感を抱える子どもたちへの選択肢の一つとして、子どもの個性を尊重し、対話のある学び場を提供することで、主体的に自分を表現でき、学ぶ意欲があり、自分考えを持って行動できる人へと、子どもたちを育んでいます。
2.誰と解決するか?
★先行事例:シュタイナー学園(神奈川県相模原市)-画一的ではない教育を行うことで、自分らしく人生を切り開ける子どもが増え、移住者と交流人口も増加し、地域が活性化している。NPO法人立の学校であったが、廃校を利用し学校法人となった。
箕面こどもの森学園の子どもたちは、さまざまな地域から通学しており、住んでいる地域でいろんな方とかかわりながら生活しています。そのため、会員や卒業生、在校生など、NPO法人コクレオの森の関係者のほかに、保護者や他団体といった子どもたちを取り巻く地域の人びと、公共施設や在籍している学校、学童や習い事といった他の教育機関、発達の相談機関や病院とも連携して協力を得ています。箕面こどもの森学園が、個性を尊重し対話のある学びの場を提供することで、これらの人たちとともに、子どもたちを豊かに育んでいきたいと考えています。
3.どう解決するか?
★ビジョン(ありたい社会の状態):人と人、人と自然が調和して暮らす、信頼によって結ばれる社会
★ミッション(自団体が果たす役割):子どもの主体性を育む教育や対話の文化を広める
私たちは、人と人、人と自然が調和して暮らす、信頼によって結ばれる社会の実現のために、(1) 小中学校の運営、(2) 子育て支援、ESD・SDGs教育、(3) みんなで創るミライの学校プロジェクトを軸に活動しています。
(1) 小中学校の運営
2004年よりオルタナティブスクール「箕面こどもの森学園」の運営を行い、子どもの主体性が育まれる対話のある教育の機会を提供してきました。現在は約70名の小中学生が学び、約120名が入学を希望し待機しています。子どもたちが意欲を持って、主体的に学ぶ姿勢や、意見や価値観の違う人とも対話する姿勢を身につけるために、この教育の場を提供し続けます。
(2) 子育て支援、ESD・SDGs教育
保護者や教師など、子どもを取り巻く大人を対象にして、子どもの自己肯定感や主体性を育み、子ども自身が自分も人も大切にしながら、持続可能な社会の一員となっていけるようなかかわり方や教育の方法を学ぶ講座やワークショップを開催し、子どもを尊重し対話を重視した子育てや教育を普及していきます。
(3) みんなで創るミライの学校プロジェクト
里山センターの運営やイベント開催をしながら、子どもも大人も尊重される教育とまちについての対話を積極的に行いながら、廃校を利用し、里山地域に子どもの主体性を育み対話を大切にする2校目の学校の設立をめざします。特色ある学校を設立することで、教育移住による移住者を増やします。
2023年度は具体的な地域を定め、パートナーとなる学校法人を決定しました。
地域のための廃校利用をみんなで考えるプロジェクトを発足させ、地域住民と移住者、地域の企業との対話の機会を定期的に開催します。その中で、地域課題の解決の糸口を見出したり、新規事業を生み出したりして、住み続けられる豊かなまちづくりをめざし、地域に住む人が主体的な学びの大切さに気づき、対話に価値を見出している地域を創っていきます。
4.“志金”のつかいみち
上記の「どう解決するか?」を実現するために、2023年度はみなさまからご支援いただいた“志金”を活用し、以下の活動に取り組みます。
活動(1) :学校設立準備委員を開催し、行政との対話を進め、地域住民や企業のみなさんと一緒に、地域が望む廃校利用について考えます。
活動(2) :主体性を育み対話を重視する教育の価値を広く伝えるワークショップを開催します。
活動(3) :子どもの主体性を育み、対話を大切にする2校目の学校設立のために寄付金を集めます。2校目は廃校を利用し、学校法人での設立をめざします。
今、教育移住という動きが広がっています。場所を選ばずに仕事ができる人がコロナの影響で増え、自然豊かな地域で子どもを育てたいと思う人も増えてきています。地域に子どもの主体性を育み、対話を大切にする学校があれば、その学校の教育に魅力を感じ、移住してくる人も多くいることと思います。
こうして集まった移住者の方や地域住民の方、いろんな立場の人たちと、まちの廃校利用を考えていくことで、「子どもの主体性を育み対話が大切にされる学校が地域のハブとして存在する、人と人、人と自然が調和して暮らす信頼によって結ばれる社会(まち)創り」をめざしていきます。
里山地域で2校目の学校設立をめざしていますが、私たちは教育の分野を担当して、エネルギーや食、医療・福祉等、他の分野の人もいて、そういう人たちと一緒に手触り感のある、顔の見える関係の中で安心できる暮らしを実現できたらと思っています。ぜひそこにかかわっていただける方を探したいですし、それを応援してくれる方と出会えたらうれしいです。
5.伴走支援者の声
「
JPBVソーシャルビジネス支援プログラム2021@オンライン」でコクレオさんを伴走支援した半年間を振り返り、まず思い出されるのは「みんな、よくしゃべる…」ということ(苦笑) 支援先3団体のうち、コクレオさん以外は2名ずつの参加でしたが、コクレオさんからは5名(!) が参加し、その上みんなよくしゃべるので、毎週のようにミーティングを重ねても、時間切れになることもしばしば。。。このサイトに掲載する原稿等も、提出〆切1週間前になっても他の支援先より遅れていましたが、最後の怒涛の追い上げで、サイト公開はなんと一番乗りでした!
この“圧倒的な”当事者意識は、20年近く挑んできたオルタナティブスクールの実践を踏まえ、「人と人、人と自然が調和して暮らす、信頼によって結ばれる社会を創る」というビジョンを、まずは一つのまちで実現しようという“覚悟”に他なりません。
上記『ロジックモデル』の長期成果に設定した年は、国連のSDGs(持続可能な開発目標)目標年である2030年度。10年スパンの新たな挑戦には、継続的な支援が必要です。マンスリーサポーターとして本プロジェクトに参加し、ミライの学校を一緒に創りましょう!(木村)